2025年1Q 米国GDP(速報値ベース)

1. 概況

  • 実質GDP成長率:▲0.3%(年率)。24年4Qの+2.4%からマイナス転換し、2022年以降で初のマイナス成長となった。​​
  • ただし 名目GDPは+3.5% と物価上昇の影響でプラス。​​
  • 国内民間最終需要(Real Final Sales to Private Domestic Purchasers)は+3.0% と前期の+2.9%からわずかに加速し、基調的な内需は堅調。​​

ざっくりいうと「ピザの枚数は減ったけど、値上げのおかげで売上は増えている」──これが実質マイナス・名目プラスの関係。お店(=米国経済)の 常連さんの食欲は前よりアップ しているので、厨房の火はまだ消えていない。つまり 「見た目は赤字気味でも、内側の客足は堅調」。景気後退と決めつける前に、物価とコア需要をセットで見ることが大切です。


2. 良い点(ポジティブファクター)

項目内容・数値評価ポイント
民間最終需要+3.0%輸出入や政府を除いた「コア需要」が底堅い。​​
個人消費サービス・非耐久財が増加、医療・住宅光熱が牽引雇用・賃金の底堅さを反映し、広範に需要が拡大。​​
設備投資 & 在庫在庫投資が大幅増、設備投資もプラス卸売(医薬品等)や知財投資が伸長し企業活動は拡大基調。​​
輸出前期の減速から回復海外需要の持ち直しが示唆され、外需の下支え要因に。​​

3. 悪い点(ネガティブファクター)

項目内容・数値リスク・懸念
輸入急増財輸入が+50.9%年率、実質GDP寄与▲5.0pt内需拡大が海外に漏れ、成長を大きく押し下げ。​​
政府支出連邦政府(特に国防)が減少財政引き締めが続けば公共需要のマイナス寄与が続く恐れ。​​
消費の減速前四半期比伸び率が2.6%→1.8%へ鈍化サービス牽引も耐久財が減少し、持続性に注意。​​
インフレ再加速国内購買価格指数+3.4%(2.2%→)PCE価格指数+3.6%(2.4%→)ディスインフレの停滞が示唆され、金融政策の制約に。​​
実質GDPマイナス見出しで“景気後退シグナル”と受け止められやすい企業・家計マインド悪化リスク。​​

4. 総合考察

  1. 内需の強さ vs. 外需・政府のブレーキ
    • 輸入増と政府支出減が▲0.3%成長の主因で、民間部門だけを見ると依然プラス圏。
    • 政策スタンスが変わらなければ、政府支出は当面抑制的。
  2. “インフレの粘着性”が再浮上
    • 賃金上昇とサービス需要が価格を押し上げ、3.4~3.6%へ加速。
    • FRBは利下げ開始時期を見極めるうえで、物価指標の再上昇を警戒。
  3. 先行きシナリオ
    • ベースケース:民間需要は緩やかに減速しつつもプラス成長へ回帰(輸入の反動減を想定)。
    • 下振れリスク:インフレ再加速→高金利長期化→住宅市場・耐久財需要の一段の縮小。
    • 上振れリスク:在庫循環で補充需要が続き、輸出も堅調なら2Q以降の反発余地。

5. 投資・政策インプリケーション

視点ポジティブ戦略注意点
債券成長減速シグナル+インフレ高止まり=中長期米国債はボラ高。中期ゾーン(5–7年)での利回り取りを検討。インフレ再加速なら長期債は価格下落リスク。
株式内需関連(ヘルスケア・公益・生活必需品)は相対的に安定。金融引き締め長期化ならハイテク・耐久消費財は調整余地。
為替高金利長期化観測でドル堅調。円建て投資家は為替ヘッジの有無を要検討。リスクオフ局面ではドル一段高の反面、米株安の相殺に注意。

まとめ

「見出しGDPはマイナスだが“質”は悪くない」。民間需要と投資が底堅く、景気後退入りを直ちに示唆する内容ではない。一方で輸入急増・物価再加速という“質の悪い悪玉”が並び、今後はインフレ鎮静と財政動向がカギとなる。投資家は短期のネガティブヘッドラインに惑わされず、内需の強弱と価格動向を注視しつつポートフォリオを調整したい。

今回の輸入急増(財輸入+50.9%年率)には “関税前の駆け込み” が混ざっている 可能性が高いとみられます。ポイントをかみ砕いて整理します。


1. もう少し細かく 関税影響による駆け込み

  • 4月5日から“全品目10%ベースライン関税”、4月9日から“対中最大145%関税”が発効──トランプ政権が3月初旬に発表し、4月上旬に施行
  • 企業は「在庫を多めに積んでおけば関税コストを回避できる」と判断し、1〜3月に前倒しで貨物を通関。とくに自動車、家電、衣料品など長期在庫できる商材が目立ったと報じられる
  • その結果、3月の財貿易赤字は史上最大の1620億ドルに拡大し、1Q実質GDPを▲0.3%まで押し下げる “一時的なブレーキ” に

「来月から消費税が上がる」と聞いて、家電量販店でテレビや冷蔵庫を買いだめする

――枚数(輸入数量)が一気に増えるので、家の倉庫はパンパン。でも、来月以降は買い控えが起きやすく、売上(輸入額)は反動でガクッと下がる

まさにこの現象が港湾と税関で起きたと考えられます。


2. 先行き:Q2以降は“反動減”に注意

シナリオ期待される動き投資家が見るべき指標
ベースケース
(駆け込みの反動)
4〜6月は輸入が急減 → GDP成長率にプラス寄与が戻るLA/LB港やLong Beachのコンテナ取扱量、ISM輸入指数
下振れリスク関税が恒久化し、在庫が過大 → 在庫調整で民間需要も減速卸売在庫比率、企業調査(NFIB 在庫計画)
上振れリスク交渉妥結や関税一部撤回 → 輸入フローが早期正常化USTR/ホワイトハウスの通商声明

4. まとめ

  • 駆け込み輸入=一時的な“割引セール前の買いだめ”。ヘッドラインGDPを弱く見せたが、内需のファンダメンタルズとは別物。
  • Q2〜Q3は反動で輸入が落ち着く公算が大きく、GDPは“見かけ上”回復しやすい。ただし関税の長期化が確定すれば、企業の仕入れコスト増・在庫圧縮が景気の新たな重石になる。
  • よって投資判断では、「輸入・在庫サイクルの山谷」と「関税の持続性」を切り分けて見ることが重要です。例えば港湾指標や在庫統計を早期にチェックし、反転のタイミングを探る
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この記事を書いた人

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