NISAの成長投資枠は、個別株を買える枠です。ただ「枠があるから買う」で始めると、あとから困る場面が出てきます。私も最初の年に、年間240万円の枠を9月までに1銘柄で使い切って、そのあと動けなくなった経験があります。
✅ この記事の結論(先に要点だけ)
- 1個別株を買えるのは成長投資枠だけ。年間240万円、生涯では1,200万円(総枠1,800万円の内数)が上限です
- 2売っても枠は「買ったときの値段(簿価)の分だけ」「翌年以降に」戻ります。年内に売って買い直す回転はできません
- 3NISA口座の損失は特定口座と損益通算できず、翌年への繰越もできません。だから「1銘柄あたりの上限」を買う前に決めます
📌 この記事で得られること
判断材料:240万円(年間枠)・1,200万円(生涯枠)・「1銘柄あたり年間枠の25%=60万円まで」という自分用の上限。この3つの数字を紙に書いて口座に貼れる形にします。
→ だから「この銘柄にいくら入れるか」で毎回迷わなくなります。
判定ポイント:2026年12月の年内最終買付日(証券会社ごとに案内が出ます)と、2027年1月4日の大発会。年間枠はここでリセットされ、前年に売った分の枠もここから使えます。
→ だから「いつまでに決めればいいか」がカレンダーに入ります。
答えないこと:どの銘柄を買うべきか、どの証券会社が一番かの順位付け、そして個別の税務判断(確定申告が必要かどうかなど)。税務の個別相談は税務署または税理士にお願いします。
つみたて投資枠と成長投資枠の違いは、数字4つで足ります
この章で得られるもの:120万円・240万円・1,800万円・1,200万円という4つの数字と、その組み合わせ方。自分が今年あと何円入れられるかを、電卓なしで言えるようになります。
NISAには2つの枠があります。つみたて投資枠と成長投資枠です。名前が似ていて混乱しやすいのですが、覚えるのは下の表の数字だけで十分です。
| 項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
| 非課税保有限度額 | 2つ合わせて1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円が上限) | |
| 非課税保有期間 | 無期限 | |
| 口座開設期間 | 恒久化(いつでも始められます) | |
| 個別株が買えるか | 買えません | 買えます |
出典:金融庁「NISAを利用する皆さまへ」(令和6年6月作成・令和7年9月改訂)。2026年9月23日時点で確認した内容です。
2つの枠は併用できます。年間で見ると120万円+240万円=最大360万円。生涯では1,800万円まで非課税で持てて、そのうち個別株などに使える成長投資枠は1,200万円が上限です。
ここで1つ計算をしておきます。1,200万円 ÷ 240万円 = 5年。成長投資枠をフルスピードで使うと、5年で生涯分を使い切る設計です。「毎年240万円を入れ続ける」という前提が自分に合っているかは、最初に考えておく価値があります。
成長投資枠でも買えないものがあります
「成長投資枠なら何でも買える」ではありません。金融庁の同じ資料によると、次のものは対象から外れています。
- 1整理銘柄・監理銘柄(上場廃止が決まった、または疑いがある銘柄)
- 2信託期間が20年未満の投資信託
- 3毎月分配型の投資信託
- 4ヘッジ目的以外でデリバティブ取引を使う投資信託
4番目が効いてくるのは、レバレッジ型のETFを考えている方です。私がよく記事で扱うSOXLのような商品は、この条件に当たるため成長投資枠では買えません。レバレッジ商品は課税口座で、という整理になります。
📌 まだ証券口座を持っていない方へ
NISA口座は、証券会社や銀行で1人1口座だけ開けます。金融機関の変更は年単位でしかできないので、最初にどこで開くかは少し考えたほうがいい部分です。手数料・ツール・AI投資との相性で比較した記事を用意しています。口座開設は無料で、スマホから10分程度で申し込めます。
個別株を買う前に決める3つの数字
この章で得られるもの:「1銘柄60万円まで」「1回80万円×3回」「−20%で売る」のように、自分の口座で今日決められる3つの数字。決めた数字はメモアプリに貼って、注文画面を開く前に見ます。
制度の数字を覚えたら、次は自分の数字です。ここを決めずに始めると、枠が残っているうちは買い続けてしまいます。私が痛い目を見たのもここでした。
① 1銘柄あたりの上限(年間枠の何%まで)
最初に決めるのは、1銘柄に入れる上限です。年間240万円に対して「25%まで」と決めれば60万円。「20%まで」なら48万円です。240万円 × 決めた% = 1銘柄の上限という式だけ持っておけば、どの銘柄でも同じ計算ができます。
なぜ%で決めるのかというと、金額で決めると株価の高い銘柄のときに「今回だけ特別」と動いてしまうからです。1単元(100株)で60万円を超える銘柄は、その時点で「今年は見送り、または単元未満株で買う」と機械的に判断できます。
② 年内に入れる額と、その分割回数
240万円を1回で使うか、3回に分けるか。ここも先に決めます。3回に分けるなら1回80万円です。分けることの効果は「買うタイミングを外したときの痛みが3分の1になる」ことで、代わりに「上がり続けたときに乗り切れない」という損もあります。どちらが良いかではなく、どちらを選んだか自分で言えるようにしておくのが目的です。
年間枠は12月末で締まり、使い残した分は翌年に繰り越せません。ただし年内の最終買付日は証券会社ごとに案内が異なります(買付が枠にカウントされる日の扱いが各社で違うため、大納会当日の注文では間に合わないことがあります)。11月のうちに自分の口座の案内を確認しておくと安全です。※各社の案内で要確認
③ 売る線(NISAは損失を他の口座と通算できません)
ここが、NISAで個別株を買うときにいちばん見落とされる部分だと私は思っています。金融庁の資料には、はっきりこう書かれています。「NISA口座から得られた損益を、他の口座(一般口座や特定口座)と損益通算することは不可。また、損失を翌年以降に繰越することも不可。」(出典:金融庁「NISAを利用する皆さまへ」令和6年6月作成・令和7年9月改訂/2026年9月23日確認)
つまり、課税口座なら「A社で50万円の利益、B社で30万円の損失」を相殺して税金を減らせますが、NISA口座の損失にはその救済がありません。利益が出たときの非課税メリットと引き換えに、負けたときの逃げ道が1本ないわけです。
だから、買う前に「−20%まで」のような売る線を決めます。この線は当てるためのものではなく、1銘柄あたりの最大損失を先に決めておくためのものです。1銘柄60万円・−20%なら、最悪でも12万円。その金額を見て「まあ受け止められる」と思えるかどうかが、上限%が自分に合っているかの答え合わせになります。
売っても枠はすぐ戻りません(簿価・翌年ルール)
この章で得られるもの:「戻るのは簿価の分だけ」「戻るのは翌年から」という2つのルールと、60万円で買って80万円で売ったときに戻る枠が60万円だという計算例。年内の売買計画がこれで組めます。
NISAには「売れば枠が戻る」という仕組みがあります。ただし条件が2つ付きます。金融庁の資料の表現では、売却した商品について「簿価の分だけ非課税保有限度額が復活し、翌年以降に再利用することが可能」です。
具体的に見ます。
| できごと | 金額 | 枠への影響 |
|---|---|---|
| 2026年3月に買った | 60万円 | 2026年の年間枠を60万円消費(残り180万円) |
| 2026年9月に売った | 80万円(+20万円) | 2026年の年間枠は戻らない(残り180万円のまま) |
| 2027年1月 | — | 生涯枠が60万円分(簿価)復活。利益の20万円分は戻らない |
ポイントは2つです。1つ目、戻るのは売値の80万円ではなく買値の60万円。2つ目、戻るのはその年ではなく翌年。この2つがあるので、「年内に何度も売り買いして枠を回す」使い方はできません。
逆に言えば、2027年1月に使える枠は「2027年の年間枠240万円」と「前年までに売った分の生涯枠」の両方を見て計算することになります。年末に売却を考えている方は、この順番を覚えておくと1月の動きが楽になります。
2027年に変わること(こどもNISAと対象商品の拡充)
この章で得られるもの:2027年(令和9年)から始まる0〜17歳向けの年60万円・限度額600万円という数字と、つみたて投資枠の商品が増える方向性。家族の口座をどうするかを、来年の話として今から置いておけます。
金融庁が2025年12月に公表した「令和8(2026)年度税制改正について ─税制改正大綱における金融庁関係の主要項目─」によると、NISAは次の2点が変わる方向です(2026年9月23日時点で確認)。
- 10〜17歳のつみたて投資枠(いわゆるこどもNISA)。年間投資枠60万円、非課税保有限度額600万円。施行は令和9年(2027年)からとされています。12歳以降は、子の同意を得た場合にのみ親権者等による払出しが可能とされています
- 2つみたて投資枠の対象商品の拡充。対象となる株式指数が追加され、指定指数に連動しない投資信託の要件が「主に株式又は公社債に投資するもの」へ広がります。債券中心・バランス型の選択肢を増やす方向です
成長投資枠の年間240万円・生涯1,200万円という数字自体は、この改正では変わりません。今年の枠の使い方を考えるうえでは、表の数字をそのまま使って大丈夫です。
口座を開いただけで止まっている人が、実は多い
この章で得られるもの:2,821万口座・累計71兆円・買付ゼロ口座およそ40%という3つの数字。自分が「開いただけ」の側にいるかどうかを、今日1分で確認できます。
金融庁が2026年7月3日に公表した調査(令和7年12月末時点)では、NISA口座数は2,821万口座、買付額は累計71兆円でした。数としては相当に広がっています。
一方で、大和アセットマネジメントが公表した2026年版の白書では、金融庁の調査データをもとに「買付額ゼロ円口座」の比率が2024年末時点で40%近い水準だったと指摘されています。同資料では、この数字には残高がある口座も含まれるため、取引も残高もない本当の未稼働口座はおよそ20%程度と分析されています。
どちらの数字で見ても、「口座は作ったが動いていない」人が一定数いるということです。そして動かない理由の多くは、銘柄が分からないことではなく、1回いくら入れるかを決めていないことだと私は感じています。先ほどの3つの数字を決めるだけで、最初の1回は動けるようになります。
AIに自分の枠の使い方を計算してもらう
この章で得られるもの:自分の残り枠・1銘柄上限・分割回数を1回の入力で表にするプロンプト。毎回の計算が数十秒で終わります。
枠の計算は単純な足し算引き算ですが、毎回やると面倒です。私は下のプロンプトをメモに入れて、四半期に1回このやりとりをしています。数値は自分の口座から転記して渡すのがポイントで、AIに株価や残高を推測させないようにします。
あなたは資産配分の整理を手伝うアシスタントです。 以下の前提で、今年の成長投資枠の使い方を表にしてください。 【制度の前提】 ・成長投資枠の年間投資枠:240万円 ・成長投資枠の非課税保有限度額:1,200万円(NISA全体で1,800万円の内数) ・売却しても、その年の年間投資枠は戻らない ・売却した分の限度額は「買ったときの値段(簿価)」で、翌年以降に復活する 【私の状況(自分で記入して渡す)】 ・今年すでに成長投資枠で買った金額:◯◯万円 ・生涯枠でこれまでに使った金額:◯◯万円 ・1銘柄あたりの上限として決めた割合:年間枠の◯◯% ・残りを何回に分けて買う予定か:◯回 【出してほしいもの】 1. 今年の残り枠と、1回あたりの金額(表にする) 2. 1銘柄あたりの上限金額(円)と、その計算式 3. 1銘柄が上限いっぱいのとき、−20%で売ったら損失がいくらになるか 4. この配分で気をつける点を3行以内 渡したデータのみを使用し、株価や残高の推測はしないこと。 売買の推奨ではなく、判断材料の整理として出力すること。
⚠️ 注意ポイント:AIは制度の細部を古い内容で答えることがあります。年間枠・限度額・復活のルールは、上のプロンプトのようにこちらから前提として渡すのが安全です。そして出てきた金額は、必ず自分の証券口座のNISA枠の画面と突き合わせて確認してください。最終的に正しいのは口座の表示のほうです。
よくある質問
Q. つみたて投資枠で個別株は買えますか?
A. 買えません。つみたて投資枠の対象は一定の条件を満たす投資信託などで、個別株は成長投資枠で買うことになります。なお令和8年度税制改正では、つみたて投資枠の対象商品を債券中心・バランス型まで広げる方向が示されています(金融庁・2025年12月公表)。
Q. 年間240万円を使い切れなかった分は翌年に足せますか?
A. 足せません。年間投資枠は各年ごとで、使い残しの繰越はできません。翌年はまた240万円からのスタートになります。
Q. NISAで買った株が値下がりしたら、特定口座の利益と相殺できますか?
A. できません。金融庁の資料に「他の口座(一般口座や特定口座)と損益通算することは不可。また、損失を翌年以降に繰越することも不可」と明記されています。だからこそ、1銘柄あたりの上限と売る線を先に決めておくことが大事になります。
まとめ
成長投資枠で個別株を買うときに必要なのは、銘柄の目利きより先に3つの数字です。1銘柄あたりの上限(240万円の何%か)、年内に入れる額と分割回数、そして売る線。この3つを決めて紙かメモアプリに書いておけば、注文画面の前で悩む時間がはっきり減ります。
そして制度側の数字は、年240万円・生涯1,200万円・復活は簿価で翌年、の3つだけ覚えておけば実務では足ります。次は、買う銘柄が割安かどうかを見る番です。PBRの見方は別記事にまとめてあります。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。また、投資助言・税務相談を行うものではありません。制度の内容は2026年9月23日時点で確認したものです。最新の取扱いは金融庁の公表資料および各金融機関の案内をご確認ください。AIの出力には誤りが含まれる場合があります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

