長期金利の上昇で株価が動く理由は「業績が悪くなったから」ではありません。変わったのは割り算の分母のほうです。この記事では、金利上昇がPERをどこまで削るのかを数字で示したうえで、自分の持ち株が金利にどれだけ弱いかをAIに5分で仕分けさせる手順まで解説します。
✅ この記事の結論(先に要点だけ)
- 1長期金利は2026年9月1日に一時2.985%と、1996年9月以来の水準になった(出典:日本経済新聞 2026年9月1日)
- 2一定の仮定を置いた試算では、金利1%ならPER25倍、金利2.985%ならPER16.7倍が標準になる。利益が同じでも株価は約33%ぶん違う計算
- 3ダメージの順番は「高PER成長株→借入の多い会社→不動産・REIT→高配当銘柄」。AIには答えではなく確認すべき場所を聞く
まず前提:いま上がっているのはどの金利か
ニュースで「金利」と言われるとき、中身は2種類あります。ここを分けておかないと話が噛み合いません。
- 1政策金利 日本銀行が決める短期の金利。住宅ローンの変動金利がここに連動します
- 2長期金利 10年国債の利回り。市場の売買で決まります。固定金利や株価の計算に効くのはこちら
2026年9月1日、新発10年物国債の利回りが一時2.985%をつけました。1996年9月以来の高さです。前日の米金利上昇が波及したことに加え、日本銀行の利上げが加速するという見方が国債売りにつながった、と報じられています(出典:日本経済新聞 2026年9月1日)。
さらに野村證券は、2026年9月・2027年1月・2027年4月の利上げをメインシナリオに変更しています(出典:野村證券レポート 2026年8月)。一時的な跳ね上がりではなく、金利のある世界に入ったと考えるほうが自然です。
住宅ローンで金利の重さを体感する
金利は%のままだと他人事になります。金額に翻訳すると一気に体感が変わるので、先に住宅ローンで見ておきましょう。借入5,000万円・35年・元利均等返済で試算した数字です。
| 金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 | 総利息 |
|---|---|---|---|
| 0.5% | 129,793円 | 5,451万円 | 451万円 |
| 1.0% | 141,143円 | 5,928万円 | 928万円 |
| 2.0% | 165,631円 | 6,957万円 | 1,957万円 |
| 3.0% | 192,425円 | 8,082万円 | 3,082万円 |
借りている金額は同じ5,000万円なのに、金利1%と3%では支払う利息が928万円と3,082万円で、差は約2,154万円になります。毎月の差は約5万円でも、35年分を積み上げるとこの規模です。
金利3.0%で借りた場合、1年目に払う総額は約231万円(月192,425円×12)。その内訳は利息が約150万円、元金が約81万円です。「返済しているのに元金がなかなか減らない」という感覚は、この内訳から来ています。
実際、2026年9月時点の住宅ローン金利は、10年固定(メガバンク)が3.84%、フラット35が3.46%です。フラット35は2018年1月の集計開始以降で最高水準を更新しています(出典:モゲチェック 2026年9月)。
この「利息2,000万円分の重さ」とまったく同じ理屈が、実は株にも効いています。株の場合は毎月の請求書が届かないため、気づきにくいだけです。
金利が上がるとPERはどこまで下がるのか
PERは株価÷EPS(1株利益)です。株価3,000円でEPSが75円なら40倍。これを逆にした「1÷PER」が益回りで、その株が1年でどれだけ利益を生んでいるかを示します。PER40倍なら益回り2.5%、PER20倍なら5.0%です。
ここで金利とつながります。国債の利回りが2.985%ということは、ほぼリスクなしで年2.985%受け取れるということ。それに対してPER40倍の株は益回り2.5%で、値下がりリスクを負っているのに国債に負けている状態になります。
株の妥当なPERは、ざっくり次の式で置けます。
リスクプレミアムを5%、期待成長率を2%と仮定して、長期金利だけを動かすとこうなります。
| 長期金利 | 理論PER | 益回り |
|---|---|---|
| 0.5% | 28.6倍 | 3.5% |
| 1.0% | 25.0倍 | 4.0% |
| 2.0% | 20.0倍 | 5.0% |
| 2.985%(現在) | 16.7倍 | 6.0% |
| 3.5% | 15.4倍 | 6.5% |
金利1%の世界ではPER25倍が標準だったものが、金利3%の世界では16.7倍が標準になります。同じ会社・同じ利益でも、株価にすると約33%の差です。業績が悪化していなくても、金利が上がるだけで株価は3割下がりうる。決算が良かったのに株価が下がる現象の正体は、多くの場合これです。
なお、この式はリスクプレミアムと期待成長率に仮定を置いた簡易的な試算です。実際の株価がこの式だけで決まるわけではない点は押さえておいてください。
金利に弱いところ・強いところ
殴られ方は全銘柄で同じではありません。効き方には順番があります。
- 1高PERの成長株 遠い将来の利益を現在価値に割り引いて評価しているため、割引率=金利の上昇が最も強く効きます
- 2借入の多い会社 支払利息がそのまま増えます。住宅ローンと同じことが決算書で起きます
- 3不動産・REIT 借入で資産を持つビジネスモデルのため、調達コスト増と利回り比較の両方を受けます
- 4配当利回りが魅力の銘柄 国債0.5%の時代の「利回り3%」と、国債2.985%の時代の「利回り3%」では、相対的な価値がまったく違います
逆に追い風になりやすいのは、金利上昇が業績に直結する銀行や保険、そして現金を厚く持つ無借金体質の会社です。銀行は預金と貸出の利ざやが広がる筋道で見ることができます。
なお足元の物色は高市政権の重点17分野が軸で、特にAI・半導体、造船、防衛、デジタル・サイバーセキュリティなど経済安全保障に関係する分野が中心とみられています(出典:三菱UFJ eスマート証券 2025年12月29日)。ただしAI・半導体は高PERになりやすい領域でもあり、「政策では強いが金利では弱い」という両面を持ちます。この二面性を頭だけで整理するのは大変なので、AIに投げます。
持ち株を金利感応度で並べ替えるプロンプト
あなたは金利と株価の関係を説明する解説役です。 【前提】 ・日本の長期金利(10年国債利回り)が2026年9月1日に一時2.985%をつけた ・日本銀行は追加利上げが見込まれている 【保有銘柄】 (銘柄名・証券コード・保有比率・PER・有利子負債の規模・配当利回りを貼り付け) 【出力してほしい内容】 1. 各銘柄を「金利上昇に強い/中立/弱い」に分類する 2. 分類の理由を次の4観点のどれに当たるかで示す ① PERの高さ ② 有利子負債の多さ ③ 配当利回りと国債利回りの比較 ④ 業績が金利上昇で伸びる構造か 3. 「弱い」に分類した銘柄について、決算資料のどこを見れば 影響の大きさを自分で確認できるかを、資料名と探し方で示す 4. この整理が外れるとしたら何が起きたときか、3つ挙げる 渡したデータのみを使用し、最新株価の推測はしないこと。 数値を使う場合は出典と時点を添え、不明なものは「不明」と書くこと。 売買の推奨ではなく、判断材料の整理として出力すること。
ポイントは3番と4番です。AIに結論を出させるのではなく、自分で確かめる場所とその見方が崩れる条件を出させます。これがないと、AIの出した分類をそのまま信じてしまいます。
⚠️ 注意ポイント:AIはPER・有利子負債・EPSといった数値を古いまま答えることがあります。数値は証券会社アプリや決算短信から自分で転記して渡すのが正解です。分類はあくまで「渡したデータの範囲での整理」であり、決算や政策変更ひとつで前提は変わります。
反対側の見方も置いておく
ここまで「金利上昇=PER低下」で通してきましたが、そうならない場合も必ずあります。金利上昇の理由が景気の強さであれば、分母が上がっても分子(利益)がそれ以上に伸びます。インフレで名目の売上・利益が膨らむ場合も同じです。さらに、利上げが事前に織り込まれていれば、実際の決定で材料出尽くしになることもあります。
実際、2026年9月1日の東京市場は金利上昇を受けて序盤に一時700円超下げましたが、その後は現物買いで下値が堅く、終値は前日比96円安の66,215円で踏みとどまりました(出典:株探ニュース 2026年9月1日)。「金利が上がったから全部売る」は雑すぎる判断です。
よくある質問
Q. リスクプレミアム5%・期待成長率2%という仮定はどう決めればいいですか?
A. 絶対的な正解はありません。大事なのは数値の当てっこではなく、同じ仮定を置いたまま金利だけを動かして「方向と大きさ」を見ることです。仮定を変えて2〜3パターン出し、幅で捉えるのがおすすめです。
Q. 金利に弱い銘柄は売ったほうがいいですか?
A. この記事は売買を勧めるものではありません。まずやるべきは、自分の資産が金利に対してどちら側へ偏っているかを把握することです。偏りが分かってはじめて、比率を調整するかどうかの検討ができます。
Q. 株価が下がった原因が業績なのか金利なのか、どう見分けますか?
A. 株価の変化を「EPSが動いたぶん」と「PERが動いたぶん」に分解すると分かります。EPSが横ばいなのに株価が下がっていれば、動いたのはPER側、つまり金利や市場心理の影響が大きいと考えられます。
まとめ
金利は割り算の分母です。上がればPERの標準が下がり、業績が同じでも株価の水準が変わります。住宅ローンで総利息が928万円から3,082万円に増えるのと、株のPERが25倍から16.7倍に落ちるのは、まったく同じ計算の裏表です。
やることはシンプルで、自分の持ち株を金利に強い順に並べ、どこに偏っているかを知る。そして「この見方が崩れるのは何が起きたときか」を書き残しておく。これだけで、次に金利が動いたときの反応がまったく変わります。
📚 ChatGPT×株式投資 実践シリーズ
Udemy講座【ゼロから始めるAI投資】応用講座 暴落対応編
暴落対応・決算分析・ポートフォリオ管理をChatGPTとClaudeで実践する動画講座です。紹介動画と講座内容はこちら。
▼ 学習内容
▼ コース内容
※Udemyの講座ページに移動します。価格は決済画面でご確認ください
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。記載の数値は本文中に示した時点のものです。住宅ローンの返済額および理論PERの数値は、一定の仮定を置いた試算です。AIの出力には誤りが含まれる場合があります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

