同じテーマの中にいても、市場が付けている「倍率」は同じではないんですよね。今日はまさにその差が数字で見えた1日でした。
✅ この記事の結論(先に要点だけ)
- 1日経平均は66,405.56円(+273.58円)と反発しました。ただし前場終値の66,682円からは276円ほど押し戻され、業種別では非鉄金属が下落上位に入っています
- 2JX金属の終値は3,810円(+0.47%)。高値3,888円から78円戻された形です。PER(会社予想)は25.56倍で、同じ日に+660円だったアドバンテストの37.99倍とは大きな開きがあります
- 3私はこの+0.47%を買い増しの根拠にしません。倍率が切り上がる条件は「銅で稼ぐこと」ではなく「半導体材料の利益比率が上がること」だと考えているからです
PART1 2026年8月28日の相場全体感
まずは今日の数字を並べておきます。前日の米国市場がエヌビディアの決算を受けて大きく上げたので、東京市場は素直に高く始まりました。ただ、終わってみると上げ幅の半分ほどを返しています。
株価ハイライト(指数)
| 指数 | 終値 | 前日比 | 時点 |
|---|---|---|---|
| 日経平均株価 | 66,405.56円 | +273.58円(+0.41%) | 8月28日 大引け |
| TOPIX | 4,146.71pt | +29.49pt(+0.72%) | 8月28日 大引け |
| NYダウ | 53,569.44ドル | +105.56ドル(+0.20%) | 8月27日 終値 |
| ナスダック総合 | 26,541.35 | +411.15(+1.57%) | 8月27日 終値 |
| S&P500 | 7,730.99 | +0.72% | 8月27日 終値 |
| SOX指数 | 11,882.17 | +270.93(+2.33%) | 8月27日 終値 |
| JX金属(5016) | 3,810円 | +18円(+0.47%) | 8月28日 15:30 |
出典:日経平均・TOPIX・売買代金は株探ニュース「日経平均 大引け」2026年8月28日配信(Yahoo!ファイナンス掲載)/NYダウ・ナスダック総合はフィスコ「27日の米国市場ダイジェスト」(Investing.com掲載)/S&P500はbloomingbit 2026年8月27日配信/SOX指数は株探US 日足データ/JX金属は松井証券マーケット情報 2026年8月28日15:30時点。
前場と大引けで、景色が変わった1日
今日いちばん大事な数字は、実は終値ではなく前場終値のほうだと思っています。NHKの報道によれば、午前の終値は66,682円で前日比+550円90銭でした。それが大引けでは66,405.56円、+273.58円です。つまり後場だけで276円ほど返しています。
前日27日の米国市場は、エヌビディアが+8.74%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が+2.33%。ブロードコムが+4.49%、インテルが+4.36%と、半導体はほぼ全面高でした。この流れを受けて東京市場も高く始まり、午前は素直にAI半導体を買っていたわけです。
では後場に何が剥がれたのか。ここが今日のポイントで、剥がれたのは「AI半導体」ではありませんでした。
動いた業種と個別銘柄
株探の大引けまとめによると、上昇した主な業種はサービス業・海運業・その他製品・証券商品先物・銀行業。下落した主な業種は非鉄金属・ガラス土石製品・その他金融業・水産農林業・ゴム製品です。非鉄金属が下落側に名前を出しています。
一方で個別を見ると、アドバンテストが+660円、東京エレクトロンが+230円、NECが+173円、富士通が+151円。半導体の検査装置や製造装置、そして情報通信の大型株はしっかり上げています。逆にソフトバンクグループは−39円、キオクシアホールディングス・フジクラ・イビデンは安く終わりました。東証プライムの売買代金は8兆1,223億円、値上がり873銘柄・値下がり631銘柄です。
整理すると、今日は「AI半導体がまとめて売られた日」でも「まとめて買われた日」でもありません。同じテーマの中で、買われるものと戻されるものが割れた日でした。
今日の主な材料
- 1米国市場でエヌビディアが+8.74%、SOX指数が+2.33%と急伸(8月27日終値・出典 フィスコ/株探US)
- 2セールスフォースが+22.58%、クラウドストライクが+20.50%と、AI関連はソフトウェアにも波及(同上)
- 38月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年同月比+1.8%。市場予想と一致し、7カ月連続で2%を下回りました(出典 総務省統計局/日本経済新聞 2026年8月28日)
- 4ドル円は159.37円前後(2026年8月28日 8:36時点・出典 トレーダーズ・ウェブ)。CPIが予想通りだったこともあり、反応は限定的でした
- 5市場の関心は、日本時間の夜に予定されるジャクソンホール会議でのケビン・ウォーシュFRB議長の講演に移っています(出典 bloomingbit 2026年8月27日配信)
PART2 JX金属の25倍と、アドバンテストの38倍
ここからが今日の本題です。JX金属(5016)の1日の動きを、時刻順に置いてみます。
📊 JX金属(5016)2026年8月28日
始値3,829円(09:00)→ 高値3,888円(10:15)→ 前場11:30時点3,858円(+66円・+1.74%)→ 終値3,810円(+18円・+0.47%)
安値3,794円(09:00)/出来高13,374,600株/売買代金514億5,447万円
PER(会社予想)25.56倍・PBR(実績)5.71倍・時価総額3兆6,619億円
出典:始値・高値・安値・終値・出来高・売買代金は松井証券マーケット情報(2026年8月28日15:30時点)。前場11:30時点の株価とPER・PBR・時価総額はYahoo!ファイナンス(同日11:30時点)。前日8月27日の終値は3,792円(−58円・−1.51%)。
高値3,888円から終値3,810円まで、78円戻されました。前日27日も3,907円の高値から3,792円まで崩れているので、2日続けて「朝がいちばん高い」形です。
そしてもう一つ、今日はきれいな比較対象がありました。アドバンテスト(6857)です。8月28日は+660円。前日27日の終値34,610円に対して、PER(会社予想)37.99倍・PBR(実績)24.03倍・EPS(会社予想)911.10円という水準です(出典 Yahoo!ファイナンス 2026年8月27日時点)。
JX金属が25.56倍、アドバンテストが37.99倍。約12倍の開きです。同じ「AI半導体」というくくりで語られる2社なのに、市場が付けている倍率はまるで違うんですよね。なんでこんなに違うの?というところを、今日は5段階で掘ってみます。
なぜ5回:エヌビディア急騰の翌日に、JX金属だけが上げを保てなかったのはなぜか
- 1 【事実】朝の東京市場は、米国の半導体高を素直に映していた 午前終値は66,682円で+550円90銭(出典 NHK 2026年8月28日)。JX金属も10:15に3,888円の高値を付け、11:30時点で+1.74%でした。ここまでは「AI半導体をまとめて買う」動きで説明がつきます。
- 2 【事実】ところが後場に剥がれたのは、半導体ではなく非鉄だった 大引けの日経平均は66,405.56円。アドバンテスト+660円、東京エレクトロン+230円は残った一方、業種別では非鉄金属が下落上位に入り、JX金属も+0.47%まで戻されました(出典 株探ニュース 2026年8月28日大引け)。同じテーマの中で、残る買いと消える買いが分かれています。
- 3 【推論】ここからは私の推測ですが、差は「エヌビディアの数字が自社の売上に何段で届くか」 検査装置や製造装置は、GPUの生産数量がそのまま受注に効きます。段数が短いんですよね。一方でJX金属の主力であるスパッタリングターゲットは、ウエハー工程で使う消耗材です。数量は増えても、増える金額の桁が違う。実際、2027年3月期1Q(2026年8月6日発表)の営業利益814億円のうち、半導体材料は144億円で約18%、情報通信材料131億円を足しても275億円で約34%。残りの約70%は基礎材料、つまり銅です。
- 4 【推論】だから利益の「質」が違い、市場が掛ける倍率も違ってくる ここも私の推測です。PERは利益に対して市場が掛けている倍率ですが、その倍率は「この利益が何年続くと思われているか」で決まります。銅の市況で出た利益は、市況が反転すれば消えます。だから高い倍率は掛けにくい。対して装置の利益は、AI設備投資が続くかぎり積み上がると見られています。JX金属25.56倍・アドバンテスト37.99倍という差は、成長率の差というより、利益の持続性への評価差だと私は読んでいます。市場は「AI半導体」という言葉ではなく、倍率のところで線を引いているんですよね。
- 5 【投資判断】だから今日の+0.47%は、買い増しの根拠にしません 私が見ているのは株価ではなく、倍率が切り上がる条件のほうです。JX金属に25倍ではなく30倍が付くとしたら、それは銅で稼いだからではなく、半導体材料と情報通信材料の営業利益比率が1Qの約34%から上がったときだと考えています。確認できるのは2026年11月の2Q決算です。それまでは保有継続、買い増しは見送り。8月27日の安値3,722円を出来高を伴って明確に割ったら、買い増しの検討そのものをいったん止めます。
⚠️ この見立てが外れるとしたら:銅高が一過性ではなく、構造的な供給不足による数年単位の高値定着だと市場が納得したときです。そうなると同じEPSに対して掛けられる倍率そのものが上がるので、「半導体材料の比率が上がらないと倍率は上がらない」という私の前提が崩れます。見分ける材料は2つ。LME(ロンドン金属取引所)の銅在庫が減り続けるかどうかと、証券会社の目標株価改定でPERの前提が何倍に置き換えられるかです。
私がSOXLで−80%をくらったとき、間違えていたこと
この「倍率」の話には、私自身の苦い経験がひもづいています。以前、半導体の3倍レバレッジETFであるSOXLで−80%を経験しました。あのとき私が何を間違えていたかというと、テーマが正しければ倍率も維持されると思い込んでいたことなんですよね。
半導体が伸びるという読み自体は外れていませんでした。でも株価は、業績が落ちる前に倍率のほうから先に縮みます。利益がまだ出ているのに、市場が「この利益はもう続かない」と判断した瞬間に、PERが30倍から15倍へ落ちる。それだけで株価は半分です。テーマの正しさは、倍率を守ってくれません。
だから今のJX金属についても、私は「AI半導体だから持っている」とは言わないようにしています。持っている理由は、半導体材料と情報通信材料という高い倍率を正当化しうる事業が、利益の中で育つかどうかを見届けたいから。その一点です。もしその比率が伸びないまま銅の市況だけで数字が動くなら、そのときは私の中の投資テーゼが変わったということなので、素直に持ち高を見直します。
PART3 AI投資活用プロンプト:PERの差の理由を言語化する
今日のような日にいちばん効くのは、「同じテーマの2社で、なぜ倍率が違うのか」をAIに整理させるプロンプトです。数値はこちらが渡します。AIに最新株価を推測させると平気で間違えるので、そこは絶対に任せません。
あなたは優秀な証券アナリストです。 同じテーマに分類される2社のPERの差が、なぜ生まれているのかを分解してください。 【A社のデータ】 会社名/PER/PBR/直近四半期のセグメント別営業利益と構成比/利益の変動要因(市況・数量・為替など) 【B社のデータ】 会社名/PER/PBR/直近四半期のセグメント別営業利益と構成比/利益の変動要因(市況・数量・為替など) 【出力してほしい内容】 1. 2社のPER差を「成長率の差」「利益の持続性の差」「財務リスクの差」の3要素に分解し、 それぞれが差の何割を説明していそうかを推定する 2. 低いほうの会社のPERが切り上がるとしたら、何が起きたときか。条件を3つ挙げる 3. 逆に高いほうの会社のPERが縮むとしたら、何が起きたときか。条件を3つ挙げる 4. 2と3のそれぞれについて、投資家が実際に確認できる公開データ(決算資料の項目名、 市況指標の名称など)を1つずつ示す 渡したデータのみを使用してください。最新株価や未開示の数値は推測しないでください。 売買の推奨ではなく、判断材料の整理として出力してください。
今日これを実際に回してみたところ、出力で一番使えたのは4番でした。「半導体材料セグメントの営業利益とその構成比を四半期ごとに並べる」「LME銅在庫の推移を見る」という、確認する場所そのものを名指ししてくれた点です。1番の割合の推定はあくまで参考程度で、そこは鵜呑みにしていません。
⚠️ 注意ポイント:AIは「もっともらしい割合」を平気で出してきます。PER差の何割がどの要因、といった数字は検証のしようがないので、判断の根拠にはしないでください。使うべきは「どこを確認すればいいか」という部分です。セグメント別の営業利益は決算短信と決算説明資料に載っているので、必ず一次情報で裏を取りましょう。
よくある質問
Q. PERが低いほうが割安、と考えてはいけませんか?
A. 業種や利益の質が違う会社同士では、単純比較はあまり意味がないと思っています。市況で振れる利益は倍率が低く付くのが普通で、それは割安なのではなく「そういう値付け」です。比べるなら同業同士か、同じ会社の過去の水準と比べるほうが実用的です。
Q. 2日続けて「寄り天」なのは悪いサインですか?
A. 2日だけでは何とも言えない、というのが正直なところです。ただ、朝の買いが続かない状態が何日も続くようなら、上値で待っている売りが厚いという見方はできます。私は日数ではなく、出来高が増えながら高値を更新できるかどうかを見ています。
Q. セグメント別の営業利益は、どこで確認できますか?
A. 各社のIRページにある決算短信と決算説明資料です。JX金属の場合は「半導体材料」「情報通信材料」「基礎材料」の3つに分かれていて、四半期ごとの営業利益が載っています。四半期ごとに並べておくと、比率の変化が一目で分かるようになります。
まとめ
2026年8月28日は、日経平均が66,405.56円(+273.58円)と反発しながら、業種別では非鉄金属が下落上位に入るという、ねじれた1日でした。JX金属は終値3,810円(+0.47%)。朝の高値3,888円からは78円戻されています。
同じAI半導体というくくりでも、アドバンテストには37.99倍、JX金属には25.56倍という倍率が付いています。この差は成長率の差というより、利益がどれだけ続くと思われているかの差だと私は読んでいます。だから今日の+0.47%では動きません。私が見るのは、半導体材料と情報通信材料の利益比率が約34%から切り上がるかどうか。確認は2026年11月の2Q決算です。ここは崩さずいきます。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。記載した数値は各出典の公表時点のものであり、その後変動する可能性があります。AIの出力には誤りが含まれる場合があります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

