PBRとは「株価が、会社の純資産の何倍で取引されているか」を表す指標です。数字が小さいほど割安に見えますが、私はPBRを単独で見ることをやめました。PBRはROE(稼ぐ力)×PER(期待の大きさ)に分解できるので、1倍割れの理由が「稼げていないから」なのか「期待されていないだけ」なのかを分けて見ないと、同じ0.8倍でも中身がまったく違うからです。
✅ この記事の結論(先に要点だけ)
- 1PBR=株価÷1株あたり純資産(BPS)。1倍は「会社を解散して純資産を配ったときの価値」と株価が同じ水準
- 2PBR=ROE×PER。ROE8%×PER12.5倍=1倍が分かれ目。1倍割れの原因がROE側かPER側かで、上がる条件が変わる
- 3「低PBRだから買う」はやめる。ROEが2期連続で下がっている低PBR株は、割安ではなく「万年割安」の可能性が高い
🎁 この記事で得られること
- 判断材料:「PBR=ROE×PER」の式1本。持ち株のPBRが0.8倍なら、ROE8%×PER10倍なのか、ROE4%×PER20倍なのかを電卓1回で分けられます。
→ 1倍に戻るために「利益が増える必要がある」のか「評価が上がる必要がある」のかが決まり、次に見る数字が1つに絞れます。 - 判定ポイント:3月決算企業の中間決算が集中する2026年10月下旬〜11月中旬(例年の時期。正確な日付は各社のIR予定で確認)。ここでROEとBPSが更新されます。
→ 記事の式に新しい数字を入れ直せば、自分の見立てが合っていたかを答え合わせできます。 - 答えないこと:「どの低PBR株が上がるか」という銘柄の推奨はしません。この記事は、PBRの数字を自分で読み解くための手順だけを扱います。
→ 他人の銘柄リストに頼らず、手元の銘柄を自分の式で判定できるようになります。
PBRとは?計算式は「株価÷1株あたり純資産(BPS)」
この章で得られるもの:PBRを自分で計算する式1本と、「1倍」が何を意味するかの具体例1つ。
PBRは「Price Book-value Ratio」の略で、日本語では株価純資産倍率と呼びます。計算式は次のとおりです。
純資産とは、会社の資産から借金などの負債を差し引いた残りです。会社が今日すべての事業をやめて、資産を売って借金を返したら、手元に残るお金の目安がこの純資産です。それを発行済み株式数で割ったものがBPS(1株あたり純資産)です。
具体例:株価1,000円・BPS1,250円の会社
説明のために仮の会社を1つ置きます(実在の会社ではありません)。株価が1,000円、BPSが1,250円なら、PBRは1,000÷1,250=0.8倍です。
これは「1株を1,000円で買うと、その裏に1,250円分の純資産が付いてくる」状態です。計算上は、会社を解散して純資産を株主に配れば1,250円が戻ってくるので、額面どおりなら250円得をする計算になります。PBR1倍割れが「割安」と言われるのはこのためです。
1倍割れなのに、なぜ誰も買わないのか
では、なぜ市場は250円の得を放置するのか。答えは「帳簿の1,250円を、市場が信じていない」か「その1,250円が今後減ると見ている」かのどちらかです。たとえば純資産の中身が売れ残りの在庫や、使われていない工場なら、実際に売ったときに帳簿どおりの値段は付きません。また毎年赤字が続けば、純資産そのものが削られていきます。
つまりPBR1倍割れは「割安のサイン」であると同時に、「市場がこの会社の純資産を額面どおりに評価していないサイン」でもあります。どちらなのかを見分けるのが、次の章の「ROE×PER」への分解です。
PBR=ROE×PER|1倍割れの原因を2つに分ける
この章で得られるもの:「ROE8%×PER12.5倍=PBR1倍」という分かれ目の数字と、4パターンの判定表。
PBRは、別の2つの指標の掛け算に分けられます。ここがこの記事でいちばん大事なところです。
=(株価÷EPS)×(EPS÷BPS)
= PER × ROE
EPSは1株あたり純利益です。株価÷EPSがPER(株価収益率)、EPS÷BPSがROE(自己資本利益率)なので、PBRはPER×ROEになります。
- RROE(稼ぐ力):株主から預かった純資産で、1年に何%の利益を出したか。純資産1,250円で利益100円なら8%
- PPER(期待の大きさ):いまの利益の何年分の値段が付いているか。利益100円で株価1,000円なら10倍
先ほどの仮の会社でEPSが100円だとすると、PERは1,000÷100=10倍、ROEは100÷1,250=8%。10×0.08=0.8倍で、最初に計算したPBRと一致します。
分かれ目は「ROE8%×PER12.5倍」
PBRがちょうど1倍になる組み合わせの代表例が、ROE8%×PER12.5倍です。8%×12.5=1.0。ROE8%という数字は、2014年に公表された経済産業省のプロジェクト報告書(通称「伊藤レポート」)が日本企業に最低限求める水準として示した数字として知られています。
この2つを基準に、1倍割れの原因を4つに分けると次のようになります。
| パターン | 計算例 | PBR | 1倍に戻る条件 |
|---|---|---|---|
| ① 稼げていない型 | ROE4%×PER15倍 | 0.6倍 | ROEが4%→6.7%以上に上がる |
| ② 期待されていない型 | ROE10%×PER8倍 | 0.8倍 | PERが8倍→10倍以上に見直される |
| ③ 両方足りない型 | ROE5%×PER10倍 | 0.5倍 | 利益と評価の両方が改善する必要 |
| ④ 赤字型 | ROEがマイナス | — | まず黒字化。PERは計算できない |
※表の数字はすべて説明用の仮の数字です(筆者作成)。
私がいちばん気をつけているのは①と④です。①は「利益が増えない限り株価が上がる理由がない」型で、PBRが低いまま何年も横ばいになりやすい。④は純資産そのものが毎年削られるので、PBRが低く見えても、分母のBPSが減っていけば株価が下がらなくてもPBRは上がっていきます。
逆に②は、稼ぐ力は十分なのに市場から忘れられている状態です。自社株買いの発表や、成長事業の開示などで評価が見直されると、PERが上がる余地があります。
株価が上がる経路は2本しかない
式を変形すると、株価=BPS×ROE×PERです。BPSが大きく変わらないとすれば、株価が上がる経路は「ROEが上がる(利益が増える)」か「PERが上がる(評価が上がる)」かの2本しかありません。低PBR株を持つときは、自分がどちらの経路に賭けているのかを1行で書けるようにしておくと、決算のたびに迷わなくなります。
金利が上がる局面でPERがどう動くかは、持ち株は金利にどれだけ弱い?AIに5分で判定させる方法で詳しく書きました。PER側の経路を考えるときに合わせて読むと、式の使い方が具体的になります。
PBR1倍割れはなぜ問題視されるのか|東証の要請と2026年の数字
この章で得られるもの:東証の要請の経緯(2023年3月・2026年4月28日)と、いまの市場全体のPBR水準の数字。
PBRという言葉がここ数年ニュースに頻繁に出るようになったきっかけは、東京証券取引所の要請です。
- 12023年3月:東京証券取引所がプライム市場・スタンダード市場の上場会社に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請。PBR1倍割れの状態が続く会社に、改善策の開示を求める内容として広く報じられました
- 22026年4月28日:東京証券取引所が要請をアップデート。「経営資源の適切な配分」を中心に、投資家の期待と取組みのポイントを整理した資料を公表しました(出典:日本取引所グループ ニュースリリース、2026年9月21日確認)
- 3開示状況:東京証券取引所 上場部の集計では、対応を開示済みの会社はプライム市場で94%(1,462社)、スタンダード市場で57%(887社)(出典:東京証券取引所 上場部「開示状況」資料、資料内の集計時点は2026年8月末、2026年9月21日取得)
要請の対象は「PBR1倍割れ」だけではありませんが、1倍割れは「会社が株主から預かったお金で、投資家が求める以上のリターンを出せていない」ことの分かりやすい目印として扱われてきました。先ほどの式で言えば、ROEが資本コスト(株主が求める利回り)を下回っている状態です。
いまの市場全体のPBRはどのくらいか
| 項目 | 数字 | 出典・時点 |
|---|---|---|
| プライム市場の実績PBR | 約1.6倍 | JPX月次統計をまとめたstock-marketdata.com、2026年8月分(2026年9月21日取得) |
| スタンダード市場の実績PBR | 約0.9倍 | 同上 |
| グロース市場の実績PBR | 約2.9倍 | 同上 |
| TOPIX500のうちPBR1倍割れ銘柄の割合 | 約20% | 野村證券 NOMURA ウェルスタイル(2026年1月15日公開記事。2018年以来の低水準とされる) |
プライム市場全体では1倍を大きく上回る一方、スタンダード市場はまだ1倍を下回っています。ここから言えるのは、「日本株はPBR1倍割れだらけ」という数年前のイメージは、少なくとも大型株については当てはまらなくなってきたということです(推論)。1倍割れの銘柄が減ったぶん、残っている1倍割れ銘柄には「それなりの理由がある」ものが相対的に増えている可能性があります(推論)。
極端な例として、PayPay証券のPBR1倍割れ銘柄一覧(2026年6月5日時点)では、日産自動車のPBRが0.25倍と掲載されていました。純資産の4分の1の値段しか付いていないということで、市場がその純資産を額面どおりに見ていないことが数字に表れています。こうした水準は「割安」と一言で片付けられるものではありません。
📌 まだ証券口座を持っていない方へ
PBR・PER・ROEは、証券会社のアプリや銘柄ページでほぼすべて無料で確認できます。この記事の式を自分の銘柄で試すには、まず証券口座があると早いです。手数料・ツール・AI投資との相性で比較した記事を用意しています。口座開設は無料で、スマホから10分程度で申し込めます。
「割安」と「万年割安」を見分ける3つのチェック
この章で得られるもの:決算短信で確認する3項目(ROEの2期推移・純資産の中身・還元方針)と、それぞれの合否ライン。
低PBRの銘柄を調べるとき、私は次の3つを順番に確認しています。どれも決算短信と決算説明資料で確認できます。
チェック1:ROEは直近2期で上がっているか
いちばん大事なのはROEの向きです。PBRが同じ0.7倍でも、ROEが5%→7%と上がっている会社と、7%→5%と下がっている会社では、先行きがまったく違います。前者はPBRが1倍に近づく経路(ROE側)が動き始めていて、後者は遠ざかっています。
合否ライン:直近2期でROEが連続して下がっていたら、その低PBRは「万年割安」側と見て、いったん候補から外します。
チェック2:純資産の中身は「すぐ現金になるもの」か
PBRの分母であるBPSは帳簿上の数字です。同じ純資産1,000億円でも、中身が現金や上場株式なら値段が付きやすく、在庫や古い設備、買収で計上したのれんが多いなら、実際に売ったときに帳簿の値段は付かないことがあります。
合否ライン:貸借対照表を見て、純資産に対して「現金及び預金+投資有価証券」がどのくらいあるかを確認します。この割合が大きいほど、PBR1倍割れの「割安」は額面に近いと考えられます。
チェック3:会社は数字で還元方針を出しているか
自社株買いは、株数を減らしてEPSを押し上げ、同時に純資産を減らすので、ROEを上げる方向に働きます。配当を増やすのも純資産の積み上がりを抑える効果があります。東証の要請以降、ROEやPBRの目標を数字で開示する会社が増えました。
合否ライン:「ROE◯%以上」「総還元性向◯%」「自社株買い◯億円」のように数字と期限が付いた方針があるか。数字のない「企業価値の向上に努める」だけなら、評価が見直されるきっかけは弱いと見ます。
⚠️ 業種の違いに注意:PBRの水準は業種によって大きく違います。銀行のように資産が大きい業種はPBRが低く出やすく、ソフトウェアのように資産が小さく利益率が高い業種はPBRが高く出やすい。PBRは同じ業種の中で比べるのが基本です。業種をまたいで「0.7倍だから割安、3倍だから割高」と並べると判断を誤ります。
AIでPBRを分解するプロンプト
この章で得られるもの:決算短信の数字を貼るだけで、4パターンの判定と3チェックの結果が表で返ってくるプロンプト1本。
ここまでの手順は電卓でもできますが、複数銘柄を並べて見るならAIに任せたほうが早く終わります。ポイントは、数字はこちらが渡して、AIには計算と整理だけをさせること。ChatGPTやClaudeに「いまの◯◯社のPBRは?」と聞くと、古い数字や誤った数字が返ってくることがあるためです。
- 1証券会社のアプリで、株価・PBR・PERを確認してメモする
- 2決算短信から、直近2期の純利益・純資産・現金及び預金・投資有価証券、還元方針の文言をコピーする
- 3下のプロンプトに貼り付けて実行する
あなたは企業財務に詳しいアナリストです。 以下の銘柄データを使って、PBRをROEとPERに分解し、 「割安」か「万年割安」かを判定する材料を整理してください。 【銘柄データ】(銘柄ごとに貼り付け) ・銘柄名/業種: ・株価、PBR、PER(取得日も記入): ・直近2期の純利益と純資産: ・現金及び預金、投資有価証券: ・還元方針(決算短信・説明資料の文言をそのまま): 【出力してほしい内容】 1. PBR=ROE×PERで分解した表(直近2期のROEも計算) 2. 次の4パターンのどれに当たるかと、その理由 ①稼げていない型(ROE8%未満)②期待されていない型(ROE8%以上・PER12.5倍未満) ③両方足りない型 ④赤字型 3. PBR1倍に戻るために必要な数字 (PERが今のままならROEが何%必要か/ROEが今のままならPERが何倍必要か) 4. 3つのチェックの結果を○×で ・ROEは直近2期で上がっているか ・純資産に占める「現金及び預金+投資有価証券」の割合 ・還元方針に数字と期限があるか 5. この見立てが外れたと判断できる条件を1つ 渡したデータのみを使用し、最新株価や業績の推測はしないこと。 業種によるPBR水準の違いがある場合はその旨を注記すること。 売買の推奨ではなく、判断材料の整理として出力すること。
出力の3番目がこのプロンプトの肝です。たとえばPBR0.8倍・PER10倍の会社なら、PERが10倍のままで1倍に戻るにはROEが10%必要、と具体的な目標値が出てきます。あとは次の決算でROEがその数字に近づいたかどうかを見るだけです。
複数の銘柄を横並びで比べたいときは、銘柄比較・スクリーニングをAIで時短する方法のプロンプトと組み合わせると、PBR以外の指標も1枚の表にまとまります。
⚠️ 注意ポイント:AIは計算を間違えることがあります。特にROEは「期首と期末の純資産の平均」で割る方法と「期末の純資産」で割る方法があり、会社の開示値とずれることがあります。出てきた数字は、決算短信に載っている会社発表のROEや、証券会社アプリの数字と必ず照らし合わせてください。判定はあくまで渡したデータの範囲での整理です。
次に見る数字と日付、やめる線
この章で得られるもの:カレンダーに入れる日付2つと、低PBR株の前提が崩れたと判断する条件2つ。
- 12026年10月下旬〜11月中旬:3月決算企業の中間決算。上期のROEの向きと、通期予想の修正を確認する(例年の時期。正確な日付は各社のIR予定で確認)
- 22027年4月下旬〜5月中旬:本決算と新しい中期計画・還元方針が出やすい時期。ROE目標や自社株買いの数字が更新されるかを見る(例年の時期)
🛑 やめる線(低PBRを理由に持っている銘柄の場合)
・ROEが2期連続で下がった → 「割安が解消される」前提が崩れたと判断する
・純資産(BPS)が前期より減った → 分母が削られており、PBRの低さが割安の根拠にならなくなる
この2つは、どちらも決算短信の1ページ目で確認できる数字です。決算発表の日に5分だけ時間を取って、式に数字を入れ直す。これを続けるだけで、「なんとなく安いから持ち続ける」を避けられます。
よくある質問
Q. PBRは何倍なら割安ですか?
A. 一律の基準はありません。目安として1倍が「解散価値と同じ」水準ですが、業種によって普通の水準が違います。同じ業種の会社と比べたうえで、PBR=ROE×PERに分解し、ROEが上がる見込みがあるかを見るのが実用的です。
Q. PBRが高い株は買ってはいけないのですか?
A. そうとは限りません。ROE20%×PER20倍ならPBRは4倍になります。高いROEが続く会社はPBRも高くなるのが自然です。高PBR株で見るべきなのは「そのROEがこの先も続くか」で、ROEが下がり始めるとPERも同時に下がりやすく、株価の下げが大きくなる点には注意が必要です。
Q. PBRはどこで確認できますか?
A. 証券会社のアプリや銘柄ページに、PERや配当利回りと並んで表示されています。自分で計算する場合は、決算短信の「1株当たり純資産」を使い、株価÷BPSで求められます。予想ベースか実績ベースかで数字が違うので、比べるときはどちらかにそろえましょう。
まとめ
PBRは「株価÷BPS」で計算でき、1倍は解散価値と同じ水準です。ただし、1倍割れを見ただけで割安と判断するのは危険です。PBR=ROE×PERに分解して、ROE8%×PER12.5倍という分かれ目のどちらが足りないのかを確かめる。そのうえで、ROEの2期推移・純資産の中身・数字付きの還元方針の3つをチェックすれば、「割安」と「万年割安」はかなりの確率で分けられます。
次の中間決算(2026年10月下旬〜11月中旬)で、手元の銘柄の数字を式に入れ直してみてください。PER側の経路、つまり金利が上がったときに評価がどれだけ動くかは、次の記事で扱っています。
📚 あわせて読みたい関連記事
Udemy講座【ゼロから始めるAI投資】応用講座 暴落対応編
決算分析・ポートフォリオ管理をChatGPTとClaudeで実践する動画講座です。PERやPBRを使った銘柄の見方も、手を動かしながら学べます。
※Udemyの講座ページに移動します。価格は決済画面でご確認ください
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資助言ではありません。AIの出力には誤りが含まれる場合があります。記載の数値は出典・取得時点のものであり、最新の情報は各出典でご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

