今日はそこに手を突っ込みます。自分が過去に書いた記事から「言い切っている文」だけを抜き出して、当時の自分を復元しました。そして、その過去の自分をAIに演じさせて、今の自分に反論させています。
✅ この記事の結論(先に要点だけ)
- 1作ったもの:自分の全記事から「私が言い切った文」だけを抜き出し、テーマ別に時系列で並べ、最後に「過去の自分」を演じさせるプロンプトを自動生成するツール
- 2かかった時間:約60分。うち30分は「主張ではない文」を弾く作業に消えました。実行は8.7秒です
- 3結果:408記事・27,647文から、私自身の主張は100件だけでした。書いた文の0.36%です
PART1 なぜ、自分の過去の判断を覚えていないのか
投資をしていて怖いのは、損することよりも「なぜそう判断したかを忘れること」だと私は思っています。忘れると、うまくいったときは「読み通りだった」ことにして、外したときは「あのときは仕方なかった」ことにしてしまう。どちらも自分に都合よく書き換えているだけです。
記録は残しているつもりでした。400本以上ブログを書いているので。それでも覚えていません。なぜかを5回降りてみました。
- 1【事実】書いた量のわりに、言い切った文はごくわずかです。
27,647文書いていて、自分の判断として言い切っているのは100文でした。0.36%です。残りは解説と事実の説明でした。 - 2【事実】その100文は、408本の記事にバラバラに散っています。
記事は日付順に並ぶだけで、「テーマ別に、自分の主張だけを時系列で見る」という並べ方はどこにも存在しません。 - 3【推論】書いた側には、読み返す動機がありません。
ここからは私の推測ですが、書いた時点で満足してしまうんだと思います。過去記事を開くのは、リンクを張るときくらいです。 - 4【推論】読み返さないので、今の判断と比べられません。
比較する材料が手元にないまま、毎回ゼロから判断しています。積み上げているつもりで、実は毎回リセットしていました。 - 5【推論】だから「考えが深まった」のか「都合よく忘れた」のかが区別できません。
ここが本丸でした。判断が変わること自体は悪くありません。悪いのは、変わったことに気づかないまま「最初からそう思っていた」ことにしてしまうほうです。
この5段目に降りて、作るものが決まりました。必要なのは記録ではなく、「過去の自分を呼び出して、今の自分に反対させる仕組み」です。記録は読み返さないと機能しませんが、反対されると無視できません。
PART2 AIに3役で議論させました
| 案 | 反対役の指摘 |
|---|---|
| A 過去の自分を復元して、今の自分に反論させる | 言い切り文の抜き出しが雑だと、引用や一般論まで「自分の主張」として拾ってしまう |
| B 記事から読者像を逆算する | 「たぶんこういう読者」で終わる。合っているか確かめる方法がない |
| C まだ書いていないテーマを検出する | 前回と発想が同じ。3日連続で「自分のサイトを棚卸しする」記事になる |
| D AI同士に模擬取引をさせる | 実データがないのでAIの作り話になる。出す数字が嘘になるので記事にできない |
| E 自分の文章のクセを辞書にする | 面白いが、それが分かって何が変わるのかが説明できない |
Cへの「3日連続で同じ発想になる」という指摘が、今日いちばん効きました。前回までの2本は、どちらも「機械で粗く捨てて、残りだけ見る」という同じ形をしていたんです。便利な型が見つかると、そればかり使ってしまう。反対役がいなければ気づきませんでした。
Dも落としました。数字が出せるかどうかがこの連載の生命線なので、作り話の数字を出すくらいなら作らないほうがいいと判断しています。
2巡目の「3日で飽きる理由」は、「過去の主張を並べても、読んで終わる」でした。ここから、出力の最後にそのままAIに貼れるプロンプトを自動生成するという設計が出てきます。読むものではなく、使うものにする。これが今回の肝です。
PART3 実装:27,647文から100文を選び出す
やっていることは単純です。文末の言い回しで、「私の判断」と「事実の説明」を分けているだけです。
# 主語が「私」である言い切りだけを残す
ASSERT = [
"と考えています", "と見ています", "と思っています", "と思います",
"だと判断しました", "に注目しています", "を狙っています",
"する方針です", "と想定しています", "つもりです", "と決めました",
]
# 受け身・解説調は「私の判断」ではないので捨てる
EXCLUDE = [
"と予想されます", "と考えられます", "と見られています",
"されるでしょう", "求められます", "なり得ます",
"が期待されます", "重要です", "大切です", "必要です",
]
# 主語が他人の文も捨てる(ここを忘れると他人の主張を自分のものにしてしまう)
OTHERS = [
"氏は", "委員", "市場は", "FRBは", "日銀は", "政府は",
"同社は", "投資家は", "専門家", "アナリスト", "多くの人",
]
def is_assertion(s):
if any(x in s for x in EXCLUDE): return False
if any(x in s for x in OTHERS): return False
if s.startswith("「") or "?" in s: return False
return any(a in s[-14:] for a in ASSERT)
1回目は、他人の主張を自分のものにしていました
最初に動かしたときは221件が「自分の主張」として拾われました。中身を見て、まずいと思いました。
拾われていた文:
「一部の委員は、インフレ圧力を抑えるためにさらなる金融引き締めが必要と考えています」
「今後の規制動向を注視することで、成長機会を見出すことができるでしょう」
1つ目は他人の主張です。「委員は〜と考えています」を、私の考えとして数えていました。これを混ぜたまま「過去の自分」を作ると、他人の意見を自分の過去だと思い込むことになります。かなり危ない間違いでした。
2つ目は解説調の一般論です。「〜でしょう」「〜と予想されます」は、書き手の判断ではなく説明の文体です。ここを主張として数えると、記事の解説部分が全部混ざってきます。
直したのは3か所です。受け身・解説調の除外、他人が主語の文の除外、そして「〜でしょう」「〜はずです」を判定リストから外すこと。結果、221件から100件に絞り込めました。半分以上が、私の主張ではなかったということです。
📊 実行結果(2026年8月24日 実行)
対象記事 408件(2024年8月〜2026年8月)/総文数 27,647
抜き出した自分の主張 100件(総文数の0.36%)
テーマ別に整理 8テーマ/60日以上にわたって主張が残るテーマ 8件
処理時間 8.7秒
出てきたものを見て、少し気まずくなりました
JX金属について、私が書いてきた主張を時系列で並べるとこうなります。
| 時期 | 当時の私が書いていたこと |
|---|---|
| 2025年11月 | 個人的には悲観しすぎなくていい局面だと見ています |
| 2025年12月 | 短期は戻り試し、でも中期ではまだ調整トレンド継続 |
| 2026年3月 | 短期の株価調整は長期の成長ストーリーを毀損しないと考えています |
| 2026年4月 | メインシナリオは「中立」と見ています |
| 2026年8月 | この水準が意識されている間は、上値では機械的な売りが出やすいと思っています |
並べて初めて分かったことがあります。私は10か月かけて、少しずつ慎重側に寄っていました。ただ、その移動を自覚したことは一度もありません。毎回その日の相場を見て、その日の言葉で書いていただけです。
これが良い変化なのか、単に株価に引っぱられただけなのかは、この表だけでは分かりません。でも、移動していた事実が見えるようになったことが今日の成果です。見えなければ、修正のしようもありません。
PART4 「過去の自分」プロンプト
ツールの最後は、抜き出した主張を埋め込んだプロンプトを自動で組み立てます。これをそのままAIに貼ると、過去の自分が反対役として立ち上がります。ブログを書いていない方でも、日記やX、メモアプリの過去投稿があれば同じことができます。
あなたは、私が過去に書いた文章から再構成した「過去の私」です。 以下は、私が実際に書いた当時の主張です。 ・2025-10 全体として、SOXLは「押し目買い局面入り」と見ています ・2025-11 この動き、個人的には悲観しすぎなくていい局面だと見ています (ここに自分の過去の発言を5〜8件、日付つきで貼る) 【あなたの役割】 ・上の主張を持っていた当時の私として発言してください ・私がこれから話す現在の判断に対して、当時の立場から異議を唱えてください ・「今のあなたはこう言っているが、当時のあなたはこう考えていた」 という形で指摘してください 【禁止事項】 ・私に同意するだけの返答はしないでください ・当時の主張になかったことを付け足さないでください ・銘柄の売買を推奨しないでください 【出力】 1. 現在の判断のうち、当時の自分と食い違う点を最大3つ 2. その食い違いは「考えが深まった」のか「都合よく忘れた」のか、 それぞれ判定してください 3. 最後に、当時の自分から今の自分への質問を1つ 推奨は不要です。最終判断は私が行います。
⚠️ 注意ポイント:「同意するだけの返答をしないでください」を必ず入れてください。これがないと、AIは過去の自分まで今の自分に賛成させてきます。反対役として呼んだのに賛成されると、意味がまるごと消えます。
できなかったこと(正直に書きます)
- プロンプトに使う8件のうち、2件はまだ解説文が混ざっています。「オルカンとS&P500の違いが理解できたと思います」のような文です。文末だけで判定している限界で、打率は8割です。
- 「主張が変わったかどうか」は判定していません。やっているのは時系列に並べるところまでで、矛盾しているかの判断は人間かAIに任せています。ここは意味を読む必要があるので、文字列処理では無理でした。
- 「〜と思います」の拾いすぎが残っています。「これ、経験ある人多いと思いますが」のような相づちも主張として数えられています。文末が同じなので分けられませんでした。
- 0.36%という数字は、少し割り引いて見てください。言い切らずに書いた判断も当然あります。あくまで「文末で明確に言い切った文」の割合です。
- 向いていない人がいます。書いた記録が50本以下なら、読み返したほうが速いです。あと、過去の自分を見るのは普通に気まずいので、そこを面白がれる人向けだと思います。
次にやること
この続きとして、今の判断を書くときに、その場で過去の自分を呼び出す形を考えています。あとから振り返るのではなく、判断する瞬間に反対されるほうが効くはずです。振り返りは、どうしても後回しになるので。
よくある質問
Q. ブログを書いていなくてもできますか?
A. できます。Xの過去投稿でも、メモアプリでも、証券会社の取引メモでも同じです。日付つきの自分の言葉が5件あれば、PART4のプロンプトはそのまま動きます。
Q. 過去の自分に反対されて、意味はありますか?
A. 私はありました。他人に反対されると「事情を分かっていない」と思えてしまうんですが、過去の自分には言い訳が通じません。同じ情報を持っていた自分なので。逃げ道がないぶん、効きます。
Q. 主張が変わるのは悪いことですか?
A. まったく悪くないと思っています。前提が変われば結論も変わります。問題なのは、変わったことに気づかないまま「最初からそう思っていた」ことにしてしまうほうです。今回作ったのは、その書き換えを防ぐための道具です。
まとめ
27,647文書いて、自分の判断として言い切ったのは100文でした。この数字を見たときに、「量を書くこと」と「判断を残すこと」はまったく別の作業だったと分かりました。私はずっと前者だけをやっていたわけです。
AIの使い道として、他人の意見を聞くより、過去の自分に反対させるほうが効く場面があるというのが今日の発見でした。過去の自分は同じ情報しか持っていないので、言い訳が一切通じません。いちばん手厳しい反対役でした。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。記事中の引用は当サイトの過去記事から機械的に抽出したものです。AIやプログラムの出力には誤りが含まれる場合があります。数値は2026年8月24日に当サイトで実際に実行した結果です。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。
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