JX金属、持ち続けて大丈夫?
株価に効くのは、3本のうちどれ?
JX金属(5016)の株価は、5月の高値から約4割下がったところにいます。
そこへ9月29日と30日の2日間で、3本のニュースが続けて出ました。レアアース、統合報告書、タツタ電線です。
見出しはどれも派手です。ただ、株価への効き方は3本ともまったく違います。
この記事では、会社の開示資料と84ページある統合報告書から数字を拾いました。そのうえで3本を「今期の稼ぎに効くか」「将来の期待に効くか」で分けます。
読み終わるころには、次にチェックする日付が2つに絞れます。
- JX金属を持っていて、高値からの下落が気になっている
- Xでニュースを見たけれど、中身までは追えていない
- 決算短信や統合報告書を自分で読む時間がない
- 3本のニュースが、株価の「稼ぎ」と「人気」のどちらに効くか
- レアアースの費用が、JX金属の今期の稼ぎに占める割合(約1%)
- 次に見る日付2つ:2026年11月中旬の中間決算と、2026年度下期の増産の稼働
- 買い時・売り時、目標株価、レアアース事業が実現するかどうかの予想
まず3本を1行ずつで言うと、こうなります。
今期の稼ぎに直接効くのは、実は2番の統合報告書だけです。1番と3番は「将来こうなるかも」という期待の話。この違いを、株価の式で順番に見ていきます。
株価は「1株の稼ぎ×人気度」で決まる
3本のニュースに入る前に、30秒だけ株価の決まり方を確認させてください。
株価は「1株あたりの稼ぎ」と「人気度」のかけ算です。専門用語では、稼ぎをEPS、人気度をPERと呼びます。
図1 JX金属の株価を分解すると
出典:株予報(2026年9月29日終値ベース。稼ぎは会社予想)
ニュースを読むときは、この2つのどちらが動く話かを分けます。
稼ぎの話は、決算の日に答え合わせができます。人気の話は、期待がしぼむと元に戻ります。
たとえば人気度が23.1倍から18倍に下がると、稼ぎが同じでも株価は2,716円です。人気の話は、上にも下にも振れやすいと覚えておいてください。
02JX金属は何で稼いでいる会社?
ニュースの重さを測るには、JX金属がどこで稼いでいるかを知っておくと早いです。事業は大きく3つに分かれます。
| 部門 | 利益 | 主な製品 |
|---|---|---|
| 半導体材料 | 395億円 | 半導体の配線をつくる材料(スパッタリングターゲット)、InP基板 |
| 情報通信材料 | 315億円 | スマホの基板に使う薄い銅箔、AIサーバーのコネクタ材料、タツタ電線 |
| 基礎材料 | 1,395億円 | 銅鉱山の権益、銅の製錬、リサイクル |
出典:JX金属「統合報告書2026」セグメント別戦略(2026年3月期)。売上は半導体材料1,772億円、情報通信材料3,187億円、基礎材料4,079億円。3部門の利益の合計は2,105億円で、共通費355億円を引いた連結営業利益は1,750億円
上の2つ、半導体材料と情報通信材料を、会社は「フォーカス事業」と呼んでいます。AI関連として注目されているのはこちらです。
ただ、利益がいちばん大きいのは3つ目の基礎材料です。銅の値段が上がると、ここの利益が増えます。
今回の3本を当てはめると、レアアースは基礎材料とフォーカス事業をつなぐ話、統合報告書の増産は半導体材料の話、タツタ電線は情報通信材料の話です。
03レアアース:決まったのは「事業になるか調べること」
1本目は、9月29日の取引終了後に出た発表です。JX金属は、米国のTronox(トロノックス)社と組んで、レアアースの製錬に参入できるかを調べ始めます。
決まったことは、この4つの数字
(3,200万米ドル)
JX金属は約25億円
世界の2〜3%
(2026年10月開始)
候補地は豪州と米国などです。レアアースを鉱石から溶かし出し、元素ごとに分け、きれいにする工程を検証します。世界の2〜3%という数字は、日本経済新聞の報道によるものです。
相手のTronox社はどんな会社?
Tronox社は、白い塗料などに使う酸化チタンの世界最大級のメーカーです。豪州・南アフリカ・米国に鉱山と工場を持っています。
チタンの原料になる鉱物の砂には、レアアースを含む鉱物も混ざっています。つまり「原料と鉱山を持つ会社」と「精製の技術を持つJX金属」が組む形です。
工場を建てると決めたわけではない
ここがいちばん大事なポイントです。今回決まったのは調査だけで、工場の建設はまだ決まっていません。
Tronox社の発表によると、調査で技術と採算が成り立つと分かった場合に、合弁会社をつくって建設する流れです。建設資金は米国輸出入銀行などと協議したとされていますが、融資が決まったわけではありません。
なぜ「精製」の工程なのか
図2 レアアースが製品になるまでの流れ
出典:JX金属 適時開示(2026年9月29日)、日本経済新聞(2026年9月29日)をもとに作成
レアアースは、掘る場所よりも「分けてきれいにする工程」が特定の国に集中しています。日本経済新聞は、中国の輸出規制の影響を受けない供給網づくりが狙いだと報じました。
Tronox社の発表では、対象にネオジムとプラセオジム(強力な磁石の原料)、ジスプロシウムとテルビウム(磁石を熱に強くする元素)が挙がっています。
統合報告書を読むと、JX金属はこの2年ほど資源の中心を銅からレアメタルへ移しています。今回はそこに精製の工程を足す取り組みです。
今期の稼ぎへの影響は約1%
JX金属の負担は約25億円です。今期(2027年3月期)の営業利益の目標2,320億円と比べると、約1.1%にあたります。
しかも費用は2026年10月から2027年中まで、1年強に分かれて出ていきます。会社が「今期の業績への影響は軽微」としているのは、数字の上でも納得できます。
それでも9月30日の株価は5日ぶりに反発しました。野村證券の株価ページでは、前場終了時点(11時30分)で3,569円、前日比+83円(+2.38%)です。
稼ぎは増えないのに株価が上がった。この分は、人気度(PER)の側の動きと読むのが自然です。
04統合報告書:今期の稼ぎ目標2,320億円と、光通信部品の増産
2本目は、9月に発行された「統合報告書2026」です。会社が何を目指し、どこにお金を使うかをまとめた年に1回の報告書です。
84ページありますが、株価に関係する数字は4つに絞れます。
① 稼ぎは3年で約2.7倍の計画
図3 営業利益の推移と、うち先端材料の稼ぎ(億円)
出典:JX金属「統合報告書2026」担当役員メッセージ。2027年3月期は2026年8月公表の見通し。先端材料は半導体材料と情報通信材料の合計
営業利益は862億円から2,320億円へ、3年で約2.7倍の計画です。赤い部分が、半導体や通信向けの先端材料で稼ぐ利益です。会社はこの部分を「フォーカス事業」と呼び、成長の中心に置いています。
② ただし稼ぎの3分の2は、まだ「銅」
ここは耳の痛い数字です。2026年3月期の3部門の利益の合計2,105億円のうち、1,395億円(66%)は資源・製錬の部門が稼いでいます。先端材料は34%でした。
会社の目標は、先端材料の割合を67%以上にすることです。今期の見通しでも40%なので、まだ道半ばです。
財務担当の役員も報告書の中で、好業績は「金属価格の高騰や為替などの外部環境に拠るところも大きかった」と書いています。
AI関連株として買われていても、稼ぎの3分の2はまだ銅の値段に左右されます。銅については銅はなぜ足りない?の記事で詳しく書きました。
③ 光通信の部品を7〜10倍に増産
先端材料の中で、いちばん大きくお金をかけているのがInP(インジウムリン)基板です。
AIのデータセンターでは、サーバー同士を光でつなぎます。InP基板は、電気の信号を光に変える部品をつくるための基板(材料の板)です。社長は報告書で「これほどの急速な拡大は経験したことがない」と書いています。
図4 InP基板の生産能力(2025年度=1)
出典:JX金属「統合報告書2026」。横軸は増産を決めた時期。薄い赤は7倍〜10倍の幅。稼働は2026年度下期から順次
2025年7月に約15億円で始まった増産が、1年で最大1,200億円まで膨らみました。これまでの分を合わせると約1,500億円規模です。
増えた設備は2026年度下期(2026年10月〜2027年3月)から順次動き出します。予定どおり立ち上がるかが、先端材料1,000億円の目標を左右します。
④ 配当は20円、その代わり自社株買い
配当の決め方も変わりました。新しいルールは「利益の25%程度を配当に回す。ただし1株20円は下回らない」です。
今期の配当は下限の20円です。これは、大株主のENEOSホールディングスから約1,949億円分の自社株を買い取ったためです。自社株買いを含めると、株主に返す割合は利益の約151%になります。
この自社株買いの資金の集め方は、「金利ゼロ827億円」を解剖した記事で解説しています。
05タツタ電線:10月1日に「相談窓口」ができた段階
3本目は、9月30日に出た子会社タツタ電線との組織改正です。
図5 10月1日からの両社のつながり
新設:タツタ電線分室
新設:技術戦略部
出典:JX金属・タツタ電線「組織改正について」(2026年9月30日)
両社に、技術の戦略を一緒に考える部署ができます。戦略の共同立案、顧客や技術の情報の共有、共同テーマの事業化を進めるとしています。
タツタ電線は大阪府東大阪市の電線メーカーで、JX金属が2024年11月に完全子会社にしました。電線のほか、スマートフォンの回路を守るフィルムなどの電子材料を持っています。
AIとの接点で分かりやすいのが漏水センサです。AIのデータセンターでは、サーバーを水で冷やす方式が広がっています。水漏れを見張るセンサの需要が急増し、タツタ電線は製造装置を増やしました(統合報告書より)。
とはいえ、今回は部署ができただけです。今期の稼ぎにはほぼ効きません。共同開発品の発表が出てきたときが、次の材料になります。
063本を並べると、株価に効くのはこの順番
次に、人気度(PER)だけが動いた場合の株価を、式で計算してみます。稼ぎは会社予想の150.9円のままです。予想や目標ではなく、かけ算の結果です。
| 人気度 | 18倍 | 23.1倍 (9月29日) | 28倍 |
|---|---|---|---|
| 株価(計算) | 2,716円 | 3,486円 | 4,225円 |
人気の話は、上下どちらにも約2割動く幅があるということです。上に行く条件と下に行く条件を、同じ数だけ並べておきます。
▲ 上に動く条件
- InP基板の増産が2026年度下期に予定どおり動く
- 中間決算で先端材料1,000億円の見通しが上方修正される
- レアアースの調査が順調と開示される
▼ 下に動く条件
- 銅の値段が下がり、稼ぎの66%を占める資源・製錬が減る
- 増産の立ち上げが遅れる、または光通信の需要が一服する
- 中国の輸出規制が緩み、「脱中国」の価値が下がる
持っている人が次に見る日付は2つ
毎日の値動きを追う必要はありません。赤い2つの日付だけ、カレンダーに入れておけば十分です。
- 2026年10月1日(木)日経平均株価に採用。タツタ電線との組織改正もこの日から。日経平均採用の解説はこちら
- 2026年10月Tronox社とのレアアース調査が始まる
- 2026年11月中旬見る日①
中間決算。今期の営業利益2,320億円、うち先端材料1,000億円の見通しが据え置きかを確認 - 2026年10月〜
2027年3月見る日②
InP基板の増産が順次稼働。決算資料の「情報通信材料」の利益が伸びているかを確認 - 2027年中レアアース調査の完了目標。合弁会社や工場建設の発表があるか
- 中間決算で、先端材料の営業利益見通し1,000億円が下方修正された
- InP基板の増産の稼働が、2027年4月以降にずれると開示された
どちらかが起きたら、「稼ぎの中心が先端材料に移っていく」という前提から見直します。
ニュースが重なった日は、AIに仕分けさせる
今回のように発表が重なった日は、AIに「稼ぎの話か、人気の話か」を先に分けてもらうと楽です。開示の本文をコピーして、下のプロンプトに貼ってください。
あなたは上場企業の開示を読む証券アナリストです。 同じ会社の開示文を複数貼ります。 【会社の前提】 ・今期の営業利益の見通し:(例:2,320億円) ・1株の稼ぎ(EPS):(例:150.9円)/人気度(PER):(例:23.1倍) 【開示文】 (1本目を貼る) --- (2本目を貼る) 【出してほしいもの】 1. 各開示で決まったこと・まだ決まっていないことを1行ずつ 2. 開示にある金額が、今期の営業利益見通しの何%か 3. 各開示が「今期の稼ぎ」「将来の人気」のどちらに効くか(表で) 4. それぞれの答えが出る日付 5. 見立てが外れたと分かる条件を1つずつ 渡したデータのみを使用し、書かれていない数字は推測しないこと。 売買の推奨ではなく、判断材料の整理として出力すること。
よくある質問
Q. レアアースは、いつJX金属の売上になりますか?
A. まだ決まっていません。2027年中に調査が終わったあと、事業にするか、合弁会社をつくるかが検討されます。工場の建設期間を考えると、売上として決算に出てくるのは早くても数年先です。
Q. 統合報告書は全部読む必要がありますか?
A. いいえ。株価に関係する数字は、25〜28ページの担当役員メッセージ(利益目標の表と配当の方針)と、32ページのInP基板の増産表でほぼ押さえられます。
Q. 配当が20円なのは悪いニュースですか?
A. 今期は約1,949億円の自社株買いをしたため、配当は下限の20円になりました。自社株買いを含めて株主に返す割合は利益の約151%で、返す総額が減ったわけではありません。
まとめ:今期の稼ぎに効くのは統合報告書の数字だけ
私はまず、中間決算の日に「先端材料1,000億円」が据え置かれたかを確認します。ニュースが何本出ても、答え合わせの日は決算の日です。
\ 次はこれ! /
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JX金属「Tronox社とレアアース製錬事業への新規参入に向けた共同スタディの合意に関するお知らせ」(2026年9月29日 適時開示)/JX金属・タツタ電線「組織改正について」(2026年9月30日)/JX金属「統合報告書2026」(2026年9月発行)/日本経済新聞(2026年9月29日)/Tronox社発表(Mugglehead掲載の要約)/株予報(2026年9月29日終値ベースのEPS・PER)/野村證券 株価ページ(2026年9月30日11時30分、年初来高値5,828円は2026年5月11日)
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。AIの出力には誤りが含まれる場合があります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

