決算で1日に19%上がった。
ここで売る?まだ持つ?
クスリのアオキホールディングス(3549)の株価が、2026年10月2日に1日で700円上がりました。出来高は直近5営業日の平均の約3.7倍です。
きっかけは、前日10月1日に出た2027年5月期第1四半期の決算です。
この記事では、会社が出した決算短信の数字と、同じ日に出た9月度の月次営業速報を突き合わせました。そのうえで、上がった理由を3つに分けます。
読み終わるころには、毎月見る数字が1つと、答え合わせの日付が2つに決まります。
- クスリのアオキを持っていて、急騰のあとどうするか決めかねている
- ドラッグストア株を見ているが、決算短信は開いたことがない
- 値動きのニュースだけ見て、毎回あとから理由を探している
- 会社の通期予想は1円も変わっていないのに、株価が19%上がった仕組み
- 毎月見る数字1つ:月次営業速報の既存店売上高前年同月比(9月度は102.4%)
- 答え合わせの日2つ:毎月上旬の月次営業速報と、2027年1月上旬ごろの第2四半期決算
- 売買のタイミング、目標株価、来期以降の業績予想
まず3つの理由を1行ずつで言うと、こうなります。
この記事で1つだけ覚えてほしいのは、今回の19%は「稼ぎ」が増えたからではなく、「人気度」が上がったからという点です。会社の予想は変わっていません。だから次に見るのも、予想ではなく毎月の売上です。
ドラッグストアは、売上の5%しか利益が残らない
本題の前に、この会社の稼ぎ方を30秒で見ておきます。ここが分かると、あとの数字が全部つながります。
クスリのアオキは、北信越を中心に全国で店を増やしているドラッグストアです。2026年8月20日(木)時点の店舗数は1,154店。うちドラッグストアが1,123店、調剤専門薬局が6店、スーパーマーケットが25店です。
第1四半期(2026年5月21日〜8月20日)の数字を、売上を100として並べるとこうなります。
図1 売上100円のうち、営業利益として残るのは5.3円
出典:クスリのアオキホールディングス「2027年5月期 第1四半期決算短信」(2026年10月1日公表)より算出。売上高1,590億42百万円、売上原価1,169億09百万円、販管費337億07百万円、営業利益84億24百万円(取得時点:2026年10月2日)
売上の5.3%しか利益が残りません。だから、この業界では売上の1%が営業利益の約19%に相当します。売上1,590億円の1%は約16億円。営業利益84億円に対して、それだけ大きいという意味です。
利益の薄さは、2つの数字で決まります。1つは「もとからある店の売上(既存店売上)」。もう1つは「仕入れた商品にいくら上乗せできたか(売上総利益率)」です。この2つが、あとで何度も出てきます。
02上がったのは「稼ぎ」ではなく「人気度」だった
株価は、1株の稼ぎ(EPS)と人気度(PER)のかけ算です。
クスリのアオキは10月1日の決算で、通期の業績予想を変えていません。決算短信にも「概ね計画どおりに推移しており(中略)業績予想数値に変更はありません」と書かれています。
つまり、1株の稼ぎの予想(200.08円)は10月1日も10月2日も同じです。それでも株価は700円上がりました。動いたのは人気度のほうです。
図2 同じ稼ぎのまま、人気度だけが18.55倍→22.05倍へ
出典:クスリのアオキホールディングス「2027年5月期 第1四半期決算短信」の通期1株当たり当期純利益200.08円、Yahoo!ファイナンス 3549 時系列(10月1日終値3,711円、10月2日終値4,411円)より算出(取得時点:2026年10月2日)
人気度が3.5倍ぶん上がった、ということです。会社が示した稼ぎの予想は1円も増えていません。
ここを押さえると、残りの話が整理できます。人気度が上がったのは、市場が「この予想は低すぎるかもしれない」と考え直したからです。その考え直しの材料が、次の3つでした。
03理由① 会社の計画は据え置きでも、市場の予想は超えた
第1四半期の実績を、前の年の同じ時期と並べます。
| 項目 | 2027年5月期1Q | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,590億42百万円 | +13.8% |
| 営業利益 | 84億24百万円 | +16.0% |
| 経常利益 | 85億68百万円 | +17.6% |
| 純利益 | 68億66百万円 | +36.4% |
| 1株の稼ぎ | 72.30円 | +43.9% |
出典:クスリのアオキホールディングス「2027年5月期 第1四半期決算短信」(2026年10月1日公表)。純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益。前年同期の1株の稼ぎは50.25円
会社が示している上期(2026年5月21日〜11月20日)の営業利益計画は155億円です。第1四半期で84億24百万円まで来たので、上期計画の54.3%を3か月で終えた計算になります。
ここで大事なのは、この進み方は前の年とほぼ同じという点です。前年の第1四半期も、その期の上期実績に対して53.8%まで進んでいました。だから会社は予想を変えませんでした。
では何が「サプライズ」だったのか。市場の予想です。アイフィス株予報は、経常利益85億68百万円が「アナリスト予想を上回る」と伝えています。ダイヤモンド・ザイの記事でも、営業利益が市場の見方に対して10億円強の上振れだったと書かれています。
会社の計画どおりでも、アナリストの平均予想がそれより低ければ、株価は上に動きます。今回はそのケースでした。
「好決算だから上がった」と書かれていても、会社の計画を見ると据え置きのことがあります。そのときは会社の計画ではなく、市場の予想とのズレが動いた理由です。同じ構図は古河電工が上方修正を出したのに下がった件の裏返しになります。
理由② 既存店売上が4か月で97.5%→102.4%に戻った
クスリのアオキは毎月、月次営業速報を出しています。前月21日から当月20日までを1か月として、全店と既存店の売上が前年の同じ月の何%だったかを公表する資料です。
既存店売上は、新しく開けた店を除いた「もとからある店」の売上です。100%を超えていれば、去年の同じ月より売れたことになります。
この数字が、6月度(2026年5月21日〜6月20日)に97.5%まで落ちていました。それが9月度(2026年8月21日〜9月20日)には102.4%まで戻りました。
図3 既存店売上高 前年同月比の推移(2027年5月期)
出典:クスリのアオキホールディングス「月次営業速報」(既存店売上高前年同月比)。同社は前月21日から当月20日までを当月度としている(取得時点:2026年10月2日)
9月度の月次営業速報は、第1四半期の決算と同じ2026年10月1日(木)に出ました。全店の売上は112.8%です。
決算の数字は5月21日から8月20日までの話なので、すでに終わった3か月です。これに対して9月度の既存店102.4%は、決算の期間より後の数字です。市場が見たのは、決算よりもこちらの1行だったと考えると、人気度の上がり方の説明がつきます。
この数字の良いところは、毎月1回、会社のホームページで無料で見られる点です。決算を待たなくても、月に1回チェックできます。
05理由③ 1株の稼ぎが43.9%増えた。うち利益の伸びは36.4%
純利益は68億66百万円で、前年同期から36.4%増えました。売上は13.8%増、営業利益は16.0%増です。なぜ純利益だけ大きく伸びたのでしょうか。
決算短信の数字を追うと、2つの要因が出てきます。
出典:クスリのアオキホールディングス「2027年5月期 第1四半期決算短信」。法人税等合計は前年同期21億96百万円/当期17億03百万円、税金等調整前四半期純利益は前年同期72億29百万円/当期85億70百万円。期中平均株式数は前年同期100,173,422株/当期94,963,067株(取得時点:2026年10月2日)
税金の負担が10.5ポイント下がり、株数が5.2%減りました。この2つが乗って、1株の稼ぎは50.25円から72.30円(+43.9%)になりました。
株数が減ったのは、会社が自社株買いを続けてきたためです。同じ利益でも株数が減れば、1株あたりの金額は増えます。
一方で、税金の負担が下がった理由は決算短信に書かれていません。ここは次の決算で確かめる項目になります。税金で増えた利益は、来期も続くとは限りません。
配当は年64円の予想(中間32円・期末32円)で据え置きです。10月2日の終値で計算すると、配当利回りは1.45%になります。配当の多い・少ないを自分で判定する手順は配当性向とは?目安と見方にまとめています。
06この上昇を疑うなら、見る数字は3つある
ここまでは上がった理由です。反対の見方も、同じ数だけ並べます。
上に動く条件
- 既存店売上が103%以上の月が続く
- 上期の営業利益が計画155億円を超える
- 売上総利益率が27%台に乗る
下に動く条件
- 既存店売上が100%割れに戻る
- 上期の営業利益が155億円に届かない
- 売上総利益率が前年の26.4%を下回る
疑う点1 売上総利益率の改善は0.06ポイントだけ
複数の記事が「粗利益率の上昇」を上がった理由に挙げています。実際に決算短信から計算すると、売上総利益率は26.43%から26.49%になりました。改善は0.06ポイントです。
金額に直すと約0.9億円で、営業利益84億円の約1%にあたります。利益の薄い業界なので無視はできませんが、「価格競争が終わった」と言い切れる幅ではありません。
疑う点2 通期計画に対する進み方は前年並み
第1四半期の営業利益84億24百万円は、通期計画320億円の26.3%です。前年の第1四半期は、その期の通期実績に対して26.8%でした。進み方は前年よりわずかに遅いことになります。
疑う点3 人気度が1日で3.5倍ぶん上がった
人気度は10月1日の18.55倍から10月2日の22.05倍になりました。会社の稼ぎの予想は同じままです。予想が上がらないまま人気度だけ動いた場合、その人気度は下がることもあります。
人気度の高い・安いを自分で判定する考え方はPBRとは?1倍割れの意味と見方で整理しています。
07比べると、見るべき数字は1つに絞れる
3つの理由を「来月も確認できるか」で並べ替えます。
いちばん上が、毎月1回だけ見る数字です。会社のホームページの月次営業速報を開き、既存店の行だけ見ます。所要時間は1分です。
08次に見る日付は2つ、やめる線は3本
毎日の値動きは追わなくて大丈夫です。赤い枠の2つだけ、カレンダーに入れてください。
- 2026年10月1日(木)第1四半期決算と9月度の月次営業速報を同じ日に公表(通期予想は据え置き)
- 2026年10月2日(金)終値4,411円(前日比+700円、+18.9%)。出来高は直近5営業日平均の約3.7倍
- 2026年11月上旬
ごろ見る日①
10月度(9月21日〜10月20日)の月次営業速報。既存店売上が100%を超えているかを確認。8月度は9月4日、9月度は10月1日に公表されています - 2027年1月上旬
ごろ見る日②
第2四半期(上期)決算。営業利益155億円・純利益106億円の計画に届いたかを確認。前期は第3四半期を2026年4月2日、本決算を2026年7月2日に公表しています
※月次営業速報と第2四半期決算の日付は、同社の過去の公表時期から見た見込みです。正式な日程は会社のIRページでご確認ください
- 既存店売上高 前年同月比が、100%を下回る月が2か月続いた
- 上期の営業利益が、計画の155億円に届かなかった
- 売上総利益率が、前年同期の26.4%を下回った
どれか1つが起きたら、「既存店の売上が戻ってきている」という今回の前提から見直します。
保有する枠をどう決めるかはNISA成長投資枠の使い方に書いた3つの数字を先に決めておくと、急騰した日の判断が楽になります。
09決算の数字は、AIに「会社の計画と市場の予想」で分けさせる
今回のように「会社は据え置き、でも株価は急騰」という決算は、見出しだけでは判断できません。決算短信の本文をコピーして、下のプロンプトに貼ってください。
あなたは上場企業の決算短信を読む証券アナリストです。 四半期決算短信の本文を貼ります。 【会社の前提】 ・通期の営業利益計画:(例:320億円) ・上期の営業利益計画:(例:155億円) ・1株当たり当期純利益の会社予想:(例:200.08円) ・発表前日の株価:(例:3,711円) 【決算短信の本文】 (ここに貼る) 【出してほしいもの】 1. 売上高・営業利益・経常利益・純利益の実績と前年同期比を表で 2. 売上総利益率と販管費率を前年同期と並べ、差を小数第2位まで 3. 税引前利益に対する法人税等の割合を前年同期と並べる 4. 上期計画・通期計画に対する進捗率 5. 会社が予想を修正したか、据え置いたか(本文の該当箇所を引用) 6. 次の決算で答え合わせできる数字を3つ、見る順に 7. 見立てが外れたと分かる条件を1つ 渡したデータのみを使用し、書かれていない数字は推測しないこと。 売買の推奨ではなく、判断材料の整理として出力すること。
よくある質問
Q. 会社が予想を上げなかったのに、株価が19%上がるのは普通ですか?
A. めずらしくはありません。株価は会社の計画ではなく、市場の予想とのズレで動きます。今回は経常利益85億68百万円がアナリストの平均予想を上回ったと伝えられています。会社の計画は据え置きでした。
Q. 月次営業速報は、どこで見られますか?
A. クスリのアオキホールディングスのIRページに「月次営業速報」として毎月掲載されます。見るのは「既存店売上高 前年同月比」の1行です。同社は前月21日から当月20日までを当月度としています。
Q. 1株の稼ぎが43.9%増えたのに、会社が予想を上げないのはなぜですか?
A. 決算短信には「概ね計画どおりに推移しており(中略)業績予想数値に変更はありません」と書かれています。第1四半期の営業利益は上期計画の54.3%で、前年の同じ時期(53.8%)とほぼ同じ進み方でした。
まとめ:毎月1分、既存店売上の1行だけ見る
私はこの銘柄を、毎月上旬に既存店売上の1行だけ見る対象に入れました。100%割れが2か月続いたら、そこで前提を見直します。急騰した日に決めることは、売るか買うかではなく、次にどの数字を見るかだと思っています。
\ 次はこれ! /
決算で動いた銘柄古河電工株はなぜ上方修正で下落?3つの理由と、次に見る数字 »Udemy講座【ゼロから始めるAI投資】
この記事でやった「決算短信をAIに読ませて、会社の計画と市場の予想に分ける」手順を、ChatGPTとClaudeで操作しながら学べる動画講座です。
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クスリのアオキホールディングス「2027年5月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年10月1日公表/TDnet)/同社「月次営業速報」(既存店売上高・全店売上高 前年同月比)/同社IRページ(2026年10月1日のお知らせ一覧)/Yahoo!ファイナンス 3549 時系列(2026年10月1日終値3,711円、2026年10月2日終値4,411円、出来高1,471,800株、年初来高値4,815円=2026年1月15日、年初来安値3,351円=2026年5月27日)/アイフィス株予報「【決算速報】クスリのアオキH、1Q経常8,568百万。アナリスト予想を上回る」/ダイヤモンド・ザイ「クスリのアオキ—大幅続伸、粗利益率上昇し第1四半期は市場予想上回る」(2026年10月2日)/株式会社トレーダーズ・ウェブ 3549 株価ページ(2026年10月2日11時30分時点)。売上総利益率・販管費率・税負担率・進捗率・PERは決算短信の数値から筆者が算出
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。AIの出力には誤りが含まれる場合があります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

