事業等のリスクは13項目。自分の持ち株に効くのはどれ?
有価証券報告書には「事業等のリスク」という章があります。会社が自分の言葉で、うちの業績が悪くなるのはこういうときですと書いている場所です。
ただ、項目が多いです。任天堂(7974)の第86期の有価証券報告書だと13項目ありました(2026年6月25日提出・任天堂公式PDF)。
そこでAIに「リスクを要約して」と頼むと、為替・競争・災害という5行が返ってきます。どの会社でも同じ5行です。
この記事では、Claudeに渡す範囲とプロンプトを変えて、13項目を3つに絞るところまでやります。実際に私が2026年10月21日に回した出力も、そのまま載せました。
読み終わると、持ち株1社について見るリスク3つと、確かめる数字が決まります。
- 有価証券報告書を開いたけれど、どこを読むか分からず閉じた
- AIにPDFを渡したら、教科書みたいな要約が返ってきた
- 持ち株を売る条件を、自分の言葉で書けていない
- 有価証券報告書のうち、Claudeに渡すのは3ページだけでいい理由
- 13項目を3つに絞らせるプロンプト2本(コピーして使えます)
- 絞った3つに、次に見る数字と確認日を付ける式
- 銘柄の推奨、目標株価、リスクが実際に起きる確率
この記事の手順を1行ずつで言うと
この作業の軸は1つだけです。会社が書いたリスクを、自分が売る条件に言い換えること。言い換えられない項目は、読んでも動けないので捨てます。
準備は、PDFとブラウザのClaudeだけで足ります
必要なのは2つです。持ち株の有価証券報告書のPDFと、ブラウザで開いたClaudeです。
有価証券報告書は、会社のIRページか金融庁のEDINETで配られています。この記事では任天堂の公式IRページにあるPDFを使いました。
Claudeの添付の上限は、公式ヘルプに次のように書かれています(2026年10月21日確認)。
有価証券報告書は100ページを超えることが多いです。つまり丸ごと渡すと、グラフや図の部分は読まれません。公式ヘルプも、大きいファイルは小さく分けて上限に収めることをすすめています(2026年10月21日確認)。
だから最初の作業は、要約を頼むことではなく章を切り出すことです。
01「事業等のリスク」は第2章の3番目にあります
場所は決まっています。「第2 事業の状況」の3番目が「事業等のリスク」です。目次から飛ぶのがいちばん早いです。
ここでは、章がどこにあるかを報告してもらうだけです。切り出す範囲を指定するときは、後の章で書くとおり、ページ番号ではなく見出しの名前で指定します。
ページ番号をAIに確認させるときは、次の1本を使います。
添付したPDFは1社の有価証券報告書です。 次の2つだけ答えてください。 1. 「第2 事業の状況」の「3 事業等のリスク」が、 紙面に印字されたページ番号で何ページから何ページまでにあるか 2. その章にあるリスクの見出しを、書かれている順に 番号をつけて全部並べる(要約しない) 見出しは原文のまま写し、PDFに無い項目は足さないこと。 分からない場合は「分からない」と書くこと。
実際の出力(Claude・2026年10月21日に実行)
1. 「3 【事業等のリスク】」は、紙面の印字番号で13ページから15ページまでです。
2. リスクの見出し(13項目)
(1) 経済環境に関するリスク
1. 為替レートの変動
(2) 事業活動に関するリスク
2. 市場環境の変化や他社との競争
3. 新製品等の開発
4. 製品の評価、適正在庫の確保
5. 外部企業への製造依存
6. 業績の季節的変動
7. システムのトラブル
8. 事業活動に影響を及ぼす諸事情
(3) 法的規制・訴訟に関するリスク
9. 製造物責任
10. 知的財産保護の限界
11. システムへの不正アクセス・機密情報の流出
12. 法律・規則等の変更
13. 訴訟等
(4) その他(小見出しはなく、本文で売上債権の回収不能・金融機関の破綻・環境規制・気候変動・自然災害・感染症などを列挙)
入力に使った資料:任天堂株式会社 第86期 有価証券報告書(2026年6月25日提出・任天堂公式PDF/2026年10月21日取得)
13項目は、3つのグループに偏って入っています
出典:任天堂株式会社 第86期 有価証券報告書 第2 事業の状況 3 事業等のリスク(2026年6月25日提出・2026年10月21日取得)
7項目が「事業活動」に固まっています。ここが、持ち株を買った理由といちばんぶつかる場所です。
02保有の理由を1行渡すと、13項目が3つに減ります
ここが本番です。切り出した3ページと一緒に、自分の保有の理由を渡します。
理由は格好よく書かなくていいです。「年末商戦の新製品が売れると思ったから」で十分です。その1行が、13項目をふるいにかけてくれます。
いま添付したPDFは、1社の有価証券報告書の 「事業等のリスク」の章だけを切り出したものです。 【私の前提】 ・保有:この会社を100株、特定口座で保有 ・保有の理由:年末商戦の新製品が売れると思ったから ・持っていられる期間:1年くらい 【やってほしいこと】 1. 「私の保有の理由が崩れる」ものだけを3つ選び、 選んだ理由を1行ずつ 2. 選ばなかった項目は「なぜ私には効かないか」を1行ずつ 3. 3つそれぞれについて、現実になったと分かる数字か 出来事を1つずつ 4. 本文に金額や比率が書かれていない項目は「数字なし」と書く 添付したPDFに書かれていることだけを使い、 PDFに無い数字・事実は足さないこと。 売買の推奨ではなく、判断材料の整理として出力すること。
実際の出力(Claude・2026年10月21日に実行)
保有の理由が崩れる3つ
・4. 製品の評価、適正在庫の確保 … 前提は「新製品が売れる」です。評価が低く在庫が余ると、前提がそのまま崩れます。本文も、製品のライフサイクルが短く季節性があるため過剰在庫や陳腐化が生じうると書いています。
・6. 業績の季節的変動 … 本文は、需要が年末年始に集中すると書いています。新製品の投入失敗や供給不足が、そのまま通期の業績に効きます。
・5. 外部企業への製造依存 … 主要部品と組立を外部に委託しています。供給が止まれば、売れる前に売る物がなくなります。
選ばなかった10項目(なぜ効かないか)
・1. 為替レートの変動 … 業績には効きますが、「新製品が売れるか」とは別の話です。
・2. 市場環境の変化や他社との競争 … 効くのは数年単位で、1年の保有では間に合いません。
・3. 新製品等の開発 … 開発の遅れは効きますが、発売済みの製品を前提にしているので順位は下がります。
・7. システムのトラブル … 起きれば大きいものの、起きる時期を見張れません。
・8. 事業活動に影響を及ぼす諸事情、9. 製造物責任、10. 知的財産保護の限界、11. システムへの不正アクセス・機密情報の流出、12. 法律・規則等の変更、13. 訴訟等 … いずれも本文に金額の記載がなく、私の保有の理由と直接つながりません。
現実になったと分かるもの
・4. → 棚卸資産(在庫)の金額が、前の四半期より増えているか
・6. → 年末商戦を含む四半期の営業利益が、通期見通しに対して何パーセント進んだか
・5. → 数字なし。委託先の社数も比率もPDFに書かれていないため、部品の供給が止まったという会社の開示が出たときにだけ分かります
入力に使った資料:任天堂株式会社 第86期 有価証券報告書 13〜15ページ(2026年6月25日提出・任天堂公式PDF/2026年10月21日取得)
13項目が3つになりました。しかも選ばなかった理由が1行ずつ残るので、あとで見返せます。
この画面の形で返ってきます。
Claudeに「事業等のリスク」の3ページだけを渡し、保有の理由で3つに絞らせたところ(2026年10月21日に実行)
033つに数字を付けると、見張る場所が決まります
最後にもう1本投げます。ここで渡すのは、自分で決算短信から写した数字です。株価や業績をAIに聞くと間違うので、数字は必ず自分で渡します。
さきほど選んだ3つのリスクについて、3列の表を作ってください。 列は「リスク」「次に見る数字」「確認の仕方」です。 ・「次に見る数字」は、決算短信か有価証券報告書に実際に 載っている項目名だけを書く(例:棚卸資産、営業利益) ・載っていない項目は「数字なし」と書き、代わりに 「何が起きたら分かるか」を1行で書く ・割合を出すときは、割り算の式も書く ・日付は、私が渡した決算発表日だけを使い、推測しないこと 【私が渡す数字(出典:2026年3月期 決算短信・2026年5月8日)】 ・売上高 2,313,051百万円/営業利益 360,117百万円 ・海外売上高比率 76.9% ・2027年3月期の通期見通し:営業利益 370,000百万円 【確認日】 ・次の四半期決算の発表日(会社のIRカレンダーで調べた日を入れる)
実際の出力(Claude・2026年10月21日に実行)
| リスク | 次に見る数字 | 確認の仕方 |
|---|---|---|
| 製品の評価、適正在庫の確保 | 棚卸資産(在庫)の金額 | 次の四半期決算短信の貸借対照表。前の四半期より増えていたら、売れ残りが増えた合図です |
| 業績の季節的変動 | 営業利益の進捗率 | 第3四半期までの営業利益 ÷ 370,000百万円。年末商戦を含む四半期なので、前の年の同じ時期の進捗率と並べて見ます |
| 外部企業への製造依存 | 数字なし | 委託先の社数も比率も有価証券報告書に書かれていません。部品の供給が止まったという開示が出たときだけ分かります |
補足:季節性が年末に集中する会社なので、「4分の3が過ぎたから75%」という単純な目安はそのまま使えません。前の年の同じ四半期の進捗率と比べてください。
入力に使った数字:任天堂株式会社 2026年3月期 決算短信(2026年5月8日・任天堂公式PDF/2026年10月21日取得)
ここまでで、見る場所が2つに決まりました。在庫の金額と営業利益の進捗率です。どちらも四半期に1回、決算短信の数ページで確かめられます。
うまくいかないときは、渡した範囲を疑います
私も最初はこうでした。PDFを丸ごと添付して「リスクを要約して」とだけ書いた結果です。
うまくいかなかった出力(Claude・2026年10月21日に実行)
この有価証券報告書の事業等のリスクは、次のように整理できます。
・為替レートの変動:海外売上の比率が高く、為替の動きが業績に影響します
・市場競争:業界の競争が激しく、他社の新製品の影響を受けます
・新製品の開発:開発には時間と費用がかかり、市場に受け入れられない可能性があります
・情報セキュリティ:サイバー攻撃による情報流出のリスクがあります
・自然災害・感染症:事業活動が停止する可能性があります
投資判断は、これらのリスクを踏まえて慎重に行ってください。
プロンプトは「この有価証券報告書のリスクを要約して」の1行だけ。間違ってはいませんが、どの会社でも同じ5行です
直したのは3か所だけです。
よくある失敗3つと、直し方
失敗1:別の章を読んでしまう
紙面に印字されたページ番号と、PDFを開いたアプリに出るページ番号はずれます。表紙や目次の分だけ前にずれます。公式ヘルプも、ページを指定するときは印字された番号ではなくPDFを表示しているアプリのページ番号を使うようすすめています(2026年10月21日確認)。
直し方:「13ページ」ではなく「見出しが『3 【事業等のリスク】』のところ」と章の名前で指定します。
失敗2:有価証券報告書に無い数字が混ざる
「在庫は約1,000億円」のように、もっともらしい金額が出ることがあります。
直し方:プロンプトに「PDFに書かれていることだけを使う」と「書かれていない項目は数字なしと書く」の2行を両方入れます。1行だけでは、AIは埋めにきます。
失敗3:13項目ぜんぶに解説が付いて返る
長い答えは読み返さないので、結局使いません。
直し方:「3つだけ」と数を先に決め、選ばなかった項目は1行ずつに制限します。
- リスクが起きる確率。有価証券報告書に確率は書かれていないので、出てきたら全部AIの推測です
- 株価・PER・目標株価。数字は証券会社のアプリか決算短信から自分で渡します
- 絞った3つを、そのまま売買の判断にすること。決めるのは、数字を見た自分です
次は、決算短信で進捗率を出す作業につなげます
リスク3つと見る数字が決まったら、次は四半期ごとの答え合わせです。同じ柱の記事を2本置いておきます。
FAQよくある質問に3つ答えます
無料のプランでもできますか?
ChatGPTやGeminiでも同じ手順でできますか?
有価証券報告書と決算短信、どちらを読めばいいですか?
13項目を3つに絞れば、四半期に1回で足ります
私はこの手順にしてから、有価証券報告書を開いて閉じるだけの夜がなくなりました。今夜は持ち株1社ぶん、3ページを切り出すところまでで十分です。
この記事の手順を、動画で通しでやる講座
ChatGPT・Claudeで学ぶ株式投資分析 応用講座
この記事の「開示資料を章で切り出してAIに渡す」工程は、講座の決算資料を読ませるセクションで、画面を見ながら進めます。
講座の中身を見る(Udemy) どの講座が合うか3問で診断する出典
・任天堂株式会社「第86期 有価証券報告書」(2026年6月25日提出)https://www.nintendo.co.jp/ir/pdf/2026/security_q2603.pdf(2026年10月21日取得)
・任天堂株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月8日)https://www.nintendo.co.jp/ir/pdf/2026/260508.pdf(2026年10月21日取得)
・Anthropic社サポート「Upload files to Claude」https://support.claude.com/en/articles/8241126-upload-files-to-claude(2026年10月21日確認)
・記事内の出力は、上記の資料を入力としてClaudeで2026年10月21日に実行したものです
免責
この記事は投資助言ではありません。特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、筆者の見解と手順の紹介です。記事中の任天堂株式会社は手順の題材として扱っており、業績や株価の予想は含みません。投資の判断は、ご自身で原本の資料を確認のうえ行ってください。また、AIの出力には誤りや古い情報が含まれることがあります。数値や固有名詞は、必ず有価証券報告書・決算短信などの原本で確かめてください。

