持ち株が1日で13%下がった。決算じゃないなら、何が起きたの?
持ち株が急に下がった日、まずAIに「なぜ下がったの?」と聞いてしまいますよね。私も最初はそうでした。でも返ってくるのは「希薄化が嫌気されたと考えられます」みたいな一般論で、どこに書いてあるのかが分かりません。
この記事では、会社が自分で出した紙(適時開示)のPDFをClaudeに渡して、下がった原因になりうる事実だけを抜き出す手順を書きます。題材は2026年10月5日に大きく下げたインフロニア・ホールディングス(以下、インフロニアHD/コード5076)です。実際のPDF12ページを私がClaudeに読ませて、出た答えをそのまま載せました。
読み終わったら、同じ手順を自分の持ち株に5分で当てはめられます。
こんな人に向けて書きました
- AIに値動きの理由を聞いても、一般論しか返ってこない人
- 適時開示という言葉は知っているけど、開いたことがない人
- 毎回プロンプトを考えるのが面倒で、型を1つ持っておきたい人
読むと分かること
- 急落した日に、どの紙を1枚だけ取ればいいか
- その紙から8項目を抜き出すプロンプト(コピーして使えます)
- 薄まる割合(希薄化率)を自分で検算する割り算
書かないこと
- インフロニアHD株の今後の株価と、買っていいかどうか
- 公募増資が株価にとって良いか悪いかの決めつけ
- PDFに書かれていない予想や、他社との優劣
AIには推測をさせません。紙に書いてあることだけを抜かせて、計算は自分で検算する。これだけ守れば、AIの出力を信じすぎずに使えます。
用意するのは、Claudeと「会社が出した紙」1枚だけです
使う道具は2つだけです。Claude(ブラウザで使えるAI)と、会社が出したPDFです。会員登録が必要な有料サイトは使いません。
| 用意するもの | どこで手に入るか | お金 |
|---|---|---|
| Claude(ファイル添付ができる状態) | claude.ai にブラウザでログイン | プランは公式ページで確認 |
| 適時開示のPDF | TDnet、または会社のIRページ | 無料 |
| 電卓(検算用) | スマホの標準電卓 | 無料 |
PDFの上限は、1ファイル1,000ページ・500MBまでです。100ページまでのPDFなら、文字だけでなく図や表も読み取ります(Claude公式ヘルプ/2026年10月6日取得)。適時開示は10ページ前後なので、まったく問題ありません。
プランごとに送れる量は違うので、使っているプランの条件はClaudeの公式ヘルプで確かめてください。長いPDFを何本も投げる日は、先に読ませたい1枚を決めてから始めると早く終わります。
02急落を見たら、ニュースより先にTDnetを開きます
値動きの理由は、たいてい会社自身が前日か当日に紙で出しています。これを適時開示(会社が投資家に知らせる義務のある発表)と呼びます。置き場所は2か所です。
- TDnet(適時開示情報閲覧サービス)で、会社名か4桁のコードで検索する
- 会社のIRページの「適時開示」「IRニュース」を開く。古いものはこちらに残ります
インフロニアHDの場合は、2026年10月2日(金)16時00分に「新株式発行及び株式の売出しに関するお知らせ」が出ていました。全12ページのPDFです。金曜の引け後だったので、株価が動いたのは次の営業日の10月5日(月)でした。
値動きと紙が出た順番(2026年10月2日〜5日)
前日比 −2.12% ▶ 10/2 16時00分適時開示
新株式発行のお知らせ ▶ 10/5(月)前日比 −13.56%
5月以来の安値
出典:株価はロイター(2026年10月2日16時50分配信)とウエルスアドバイザー(2026年10月5日10時04分配信)。開示の日時はTDnet掲載のPDF。いずれも2026年10月6日取得
ここで大事なのは、ニュース記事を読み歩かないことです。ニュースは紙を要約したものなので、先に紙を取ったほうが早く終わります。
03PDFを渡して、原因になりうる事実を8項目だけ抜かせます
Claudeの入力欄にPDFをドラッグして添付し、次の文をそのまま貼ります。「添付したPDFだけを情報源にする」の一文が効きます。
あなたは日本株の開示資料を読む調査アシスタントです。 添付した適時開示PDFだけを情報源にして、次の8項目を表にしてください。 1 開示の正式な名前と、取締役会決議の日付 2 この開示で増える株数(公募・第三者割当・売出しを分けて) 3 増える前の普通株式数と、その基準日 4 調達する金額(手取概算額) 5 その金額を何に使うか。金額と期限をそのまま書く 6 返済する借入金が、もともと何のための借入だったか 7 今後、価格や条件が決まる日付 8 既存の株主にとって不利に働きうる点(PDFに書いてある範囲だけ) ルール ・PDFに書いていないことは「記載なし」と書く。推測で埋めない ・数字は単位と桁をPDFのまま写す。丸めない ・株価の見通しや売買の判断は書かない
実際の出力
私がClaude(2026年10月6日に実行)でインフロニアHDのPDFを読ませた結果です。入力に使ったのはTDnet掲載の「新株式発行及び株式の売出しに関するお知らせ」(2026年10月2日16時00分開示・全12ページ/2026年10月6日取得)です。
| 項目 | PDFに書かれている内容 |
|---|---|
| 1 開示名と決議日 | 新株式発行及び株式の売出しに関するお知らせ/2026年10月2日(金)付の取締役会決議 |
| 2 増える株数 | 公募 47,826,100株(国内 12,076,100株+海外 35,750,000株)/第三者割当 上限 7,173,900株(割当先はSMBC日興証券)/オーバーアロットメントによる売出し 上限 7,173,900株 |
| 3 増える前の普通株式数 | 274,845,024株(2026年9月30日現在)。別に第1回社債型種類株式 20,000,000株 |
| 4 調達する金額 | 手取概算額合計の上限 147,236,202,000円 |
| 5 使い道 | 2026年12月までに117,000百万円を短期借入金の返済に充当。残額が出た場合は2028年3月末までにM&A待機資金へ充当 |
| 6 借入金の正体 | アルソシア建設(2026年10月1日付で三井住友建設から社名変更)と水ingの買収に伴う借入。うちアルソシア建設分は77,000百万円(返済期限2027年3月25日) |
| 7 今後の日付 | 発行価格等決定日は2026年10月21日(水)から10月26日(月)までのいずれかの日 |
| 8 不利に働きうる点 | 発行済株式総数が増える。第三者割当まで全部実行された場合、普通株式は329,845,024株になる |
ここまでで、下がった原因になりうる事実がそろいました。決算ではなく「株数が増える発表」だったと分かります。8項目のうち、株主に直接ひびくのは2・3・8の3つです。
04薄まる割合は、AIに割り算させて自分で検算します
株数が増えると、1株あたりの価値が薄まります。これを希薄化(1株の価値が薄まること)と呼びます。式は1行です。
増える株数 ÷ 増える前の普通株式数 = 希薄化率
同じPDFの数字だけを使って、希薄化率を計算してください。 ・分母は「増える前の普通株式数」だけを使う ・種類株や潜在株は分母に入れない ・次の3つを、式と答えの両方で出す A 公募だけの希薄化率 B 公募+第三者割当をすべて実行した場合の希薄化率 C Bのとき、1株当たり利益が単純計算で何%目減りするか ・最後に、PDFに書かれた「発行後の普通株式数」と自分の計算結果が 一致するかを確認する ・一致しない場合は「一致しない」と書き、どの数字がずれているかを示す
実際の出力
A 公募だけ
47,826,100 ÷ 274,845,024 = 0.1740 → 17.40%
B 公募+第三者割当をすべて実行
(47,826,100 + 7,173,900)÷ 274,845,024
= 55,000,000 ÷ 274,845,024 = 0.2001 → 20.01%
C 1株当たり利益の目減り(単純計算)
1 −(274,845,024 ÷ 329,845,024)= 0.1667 → 約16.7%
検算
274,845,024 + 55,000,000 = 329,845,024株。PDFの「本第三者割当増資後の発行済株式総数(普通株式)329,845,024株」と一致します。
最後の検算が合ったので、分母の取り方が正しいと確認できました。PDFに書かれた発行後の株数と自分の足し算が合うか、ここは必ず見てください。
希薄化率は分母の取り方で変わります(インフロニアHDの場合)
出典:TDnet掲載「新株式発行及び株式の売出しに関するお知らせ」(インフロニア・ホールディングス/2026年10月2日16時00分開示)の株数をもとに筆者が計算。2026年10月6日取得
最後に「次に見る日付」を1枚の表にします
理由が分かったら、次にすることは1つです。いつ何が決まるかを、紙に書かれた日付だけで表にします。これをやっておくと、その日まで値動きを見て慌てる回数が減ります。
同じPDFから、今後の日付だけを拾って3列の表にしてください。 列は「日付」「その日に何が決まる・起きる」「どこで確認できるか」の3つだけ。 ・PDFに日付が書かれているものに限る。推測の日付は入れない ・日付が範囲で書かれているものは、範囲のまま書く ・確認先は、PDF内に名前が出ている開示や資料名だけを書く
実際の出力
| 日付 | 何が決まる・起きる | 確認先 |
|---|---|---|
| 2026年10月21日(水)〜10月26日(月) | 発行価格等決定日。公募の発行価格が決まる | 会社の適時開示(発行価格等決定のお知らせ) |
| 2026年12月まで | 117,000百万円を短期借入金の返済に充当 | 決算短信・四半期の開示 |
| 2027年3月25日 | アルソシア建設買収分 77,000百万円の返済期限 | 決算短信・有価証券報告書 |
| 2028年3月末まで | 残額をM&A待機資金に充当する予定 | 会社の適時開示 |
調達する1,472億円のうち1,170億円、つまり約8割が借入金の返済に回ります。残額が出た場合は、2028年3月末までにM&A待機資金へ充てる予定とPDFに書かれています。この内訳が分かると、「設備投資のための増資」とは中身が違うことが見えてきます。
06うまくいかない時は、プロンプトの3か所を直します
失敗した出力(一般論しか返らなかった例)
最初に私がやった、いちばん雑な聞き方です。
インフロニア・ホールディングスの株価下落の背景としては、公募増資の発表による1株当たり価値の希薄化への懸念や、需給の悪化が意識された可能性が考えられます。建設セクター全体の地合いや、市場全体のリスク回避姿勢も影響した可能性があります。正確な要因については、同社の適時開示や決算資料をご確認ください。
全部「可能性」で終わっています。何%薄まるのかも、どの紙に書いてあるのかも分かりません。直した場所は3つです。
よくある失敗3つと、直し方
| よくある失敗 | プロンプトの直し方 |
|---|---|
| 分母を間違える 種類株20,000,000株まで分母に足して、18.65%と答えてしまう | 「分母は増える前の普通株式数だけを使う。種類株や潜在株は分母に入れない」と書き足します |
| 数字が丸められる 147,236,202,000円が「約1,500億円」になる | 「数字は単位と桁をPDFのまま写す。丸めない」と書きます |
| 推測が混ざる PDFにない業界の見通しや他社比較が入ってくる | 「PDFに書いていないことは記載なしと書く」と縛り、情報源をPDF1本に限定します |
とくに1つ目は見逃しやすいです。PDFに書かれた「発行後の株数」と自分の足し算を突き合わせると、分母の間違いはその場で見つかります。
07AIに任せてはいけない所が3つあります
- 買う・売るの判断をAIに聞かない。AIは紙を読む係です
- 将来の株価を聞かない。発行価格が決まる日もまだ先です
- まとめサイトの数字をAIに渡さない。渡すのは会社が出した紙だけにします
加えて、AIが出した数字のうち1つは、必ずPDFの該当ページを自分の目で確かめてください。今回は「発行後の普通株式数 329,845,024株」が、その1つでした。
次にやる作業はこの2つです
今日の手順で「紙を読ませる」ができたら、次は銘柄を選ぶ側と、数字を疑う側に進みます。
- スクリーニング条件の決め方|Claudeに6つの数値を出させる10分の手順
- ChatGPTの株価が間違う理由|AIの数字を裏取りする3ステップと確認先
- 作業別プロンプトのまとめページ(投資の作業をAIでやる手順の一覧)
よくある質問に3つ答えます
Q. 適時開示はどこで見られますか?
TDnet(適時開示情報閲覧サービス)で、会社名か4桁のコードで検索します。同じPDFは会社のIRページの「適時開示」「IRニュース」にも置かれます。TDnetには直近のものだけが並ぶので、古い開示は会社のIRページから探してください。
Q. 公募増資が出たら、株価は必ず下がるんですか?
この記事では答えません。1株あたりの価値が何%薄まるかは計算で確定しますが、株価がどう動くかは別の話です。手順で確かめるのは「薄まる割合」と「お金の使い道」の2つだけにしています。
Q. 決算短信でも同じ手順が使えますか?
使えます。プロンプト①の8項目を「売上・営業利益・経常利益・最終利益・前期比・会社予想・進捗率・修正の有無」に差し替えるだけです。「添付したPDFだけを情報源にする」「丸めない」「記載なしと書く」の3つのルールはそのまま使ってください。
この記事のまとめ
急落の理由を探すとき、私はもうニュースを先に読みません。会社が出した紙を1枚取って、Claudeに8項目を抜かせて、割り算だけ自分でやる。この3つで5分です。
この記事の手順を、動画で通しでやる講座
「ChatGPT&Claude×株式投資」応用講座
この記事でやった「資料をAIに読ませて数字を抜き出す」流れを、画面を映しながら動画で通しで解説しています。
講座の中身を見る(Udemy) どの講座が合うか3問で診断する出典(すべて2026年10月6日取得)
・インフロニア・ホールディングス「新株式発行及び株式の売出しに関するお知らせ」2026年10月2日16時00分開示(TDnet掲載・全12ページ)https://www.release.tdnet.info/inbs/140120261001544031.pdf
・ロイター「インフロニアHD、公募増資などで1472億円調達 希薄化率20%」2026年10月2日16時50分配信(ニューズウィーク日本版 掲載)https://www.newsweekjapan.jp/articles/-/335804?display=b
・フィスコ「インフロニア—大幅続落、公募増資発表による希薄化を嫌気」2026年10月5日10時31分配信(マネーポストWEB 掲載)https://www.moneypost.jp/1451955
・ウエルスアドバイザー「インフロHDが5カ月ぶり安値、公募増資で希薄化・需給悪化を警戒」2026年10月5日10時04分配信(Yahoo!ファイナンス 掲載)https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/3f84e6a7ff24b174e5694037b86c358625e84e52
・Claude公式ヘルプ「Does Claude support PDF uploads?」https://support.claude.com/en/articles/8241126-does-claude-support-pdf-uploads
・希薄化率・1株当たり利益の目減りは、上記PDFの株数をもとに筆者が計算
【免責】この記事は、AIを使った資料の読み方を説明したものです。特定の銘柄の売買を勧めるものではなく、投資助言でもありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。また、生成AIの出力には誤りが含まれることがあります。記事内のプロンプトで得た数字は、必ず会社が出した開示資料の原文でご確認ください。

